全国的に民泊を解禁する住宅宿泊事業法(民泊新法)の来年6月施行を前に、自治体で独自に営業日数や地域などで規制をかける準備を行う動きが全国的に加速してきた。民泊新法では年間180日を上限に住宅地でも民泊の営業を認める一方で、自治体ごとに営業日数や地域について独自の規制をかけることを認めるためだ。

 

東京都 民泊条例の検討状況まとめ(3/20更新)

本ページでは新宿区や世田谷区、大田区などの各自治体ごとに進む民泊条例の検討状況をまとめる。

都道府県自治体進捗状況と検討中の規制ルール
東京都千代田区・文教・学校周辺等で日曜正午~金曜正午まで民泊営業を禁止
千代田区住宅宿泊事業の実施に関する条例
千代田区民泊サービスのあり方検討会を開催
東京都中央区住宅宿泊事業に関するページ
・区内全域で、月曜正午~土曜正午まで民泊営業を禁止

中央区住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例
東京都港区住宅宿泊事業に関するページ
・家主居住型は年間を通して営業可能

・住居専用地域の家主不在型は春/夏/冬の休み以外民泊営業を禁止
港区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例
東京都新宿区住宅宿泊事業に関するページ
・2017年12月12日条例成立

・住居専用地域(※1)では月曜正午~金曜正午まで民泊営業を禁止
新宿区住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例
東京都文京区 住宅宿泊事業に関するページ
・住居専用地域(※1)と文教地区では月曜日~木曜日まで民泊営業を禁止
・届出15日前までに近隣住民に周知
文京区住宅宿泊事業の運営に関する条例
東京都台東区住宅宿泊事業に関する手続き
・管理者常駐型ではない家主不在型は全域で、月曜正午〜土曜正午まで※制限
※祝日(正午)から翌日(正午)、年末年始(12/30~1/3)は除く
・家主居住型と家主不在型(管理者常駐型)は制限なし
東京都台東区住宅宿泊事業の運営に関する条例
東京都墨田区住宅宿泊事業に関する手続き
住宅宿泊事業の実施運営に関するガイドライン
東京都江東区住宅宿泊事業に関する手続き
・住居専用地域の一部で月曜正午~土曜正午※まで民泊営業を禁止
・制限区域は、第一種中高層住居専用地域のみ
※祝日(正午)から翌日(正午)を除く
江東区住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例
東京都品川区住宅宿泊事業法に関する手続き
・一部地域で、月曜正午〜土曜正午まで民泊営業を禁止
品川区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例
東京都目黒区・区内全域で、日曜正午~金曜正午まで民泊営業を禁止
・届出15日前までに近隣住民に周知
目黒区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例
東京都大田区・2017年12月8日全国初の条例成立
・ホテル、旅館の建築が可能な用途地域でのみ営業を認める
・住宅専用地域での民泊営業はできない
大田区住宅事業法施行条例
東京都世田谷区住宅宿泊事業法に関する手続き
・住居専用地域(※1)では月曜正午~土曜正午まで民泊営業を禁止
※祝日(正午)から翌日(正午)を除く
世田谷区住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例
世田谷区住宅宿泊事業検討委員会を開催
東京都渋谷区住宅宿泊事業(民泊)について
・住居専用地域、文教地区で、
春/夏/冬の休み以外民泊営業を禁止
渋谷区住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例
東京都中野区住宅宿泊事業法に関する手続き
・住居専用地域(※1)では月曜正午~金曜正午まで民泊営業を禁止
※祝日(正午)から翌日(正午)を除く

・住居専用地域では、対面による本人確認
中野区住宅宿泊事業の適正な実施の確保に関する条例
東京都杉並区住宅宿泊事業法に関する手続き
・家主不在型は住居専用地域(※1)で月曜正午~金曜正午まで禁止
※祝日の前日(正午)から祝日の翌日(正午)までの期間を除く

杉並区住宅宿泊事業の実施の制限に関する条例
東京都豊島区住宅宿泊事業法(民泊新法)の豊島区ルール骨子案
東京都北区住宅宿泊事業法(民泊制度)
北区ガイドライン
東京都荒川区・区内全域で、月曜正午〜土曜正午まで営業を禁止
※祝日(正午)から翌日(正午)を除く
住宅宿泊事業法・旅館業法に関する荒川区ルール(素案)
東京都板橋区・住居専用地域(※1)では日曜正午~金曜正午まで民泊営業を禁止
※祝日の前日を除く

板橋区住宅宿泊事業を実施する区域及び期間の制限を定める条例
東京都練馬区住宅宿泊事業法に関する手続き
・住居専用地域(※1)では月曜正午~金曜正午まで民泊営業を禁止
※祝日の前日(正午)から祝日の翌日(正午)までの期間を除く
練馬区住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例

(※1) 都市計画法第 8 条第 1 項第 1 号にいう第 1 種低層住居専用地域、第 2 種低層 住居専用地域、第 1 種中高層住居専用地域及び第 2 種中高層住居専用地域

(※2) 都市計画法第8条第1項第1号にいう、第 1 種低層住居専用地域、第 2 種低層住居専用地域

 

千代田区:駆けつけ型か家主不在型かで制限

千代田区では、文教地区等、学校周辺、人口が密集している区域、人口が密集していない区域の4区域と家主居住型、家主不在型(管理者常駐型)、家主不在型(管理者かけつけ型)の3業態で民泊の営業を制限。

大手町や霞が関などのオフィスエリアを中心とした「人口が密集していない地域」(総人口の1.4%が居住)では制限はなく180日の運営ができる一方で、文教地区や学校周辺区域では全日不可を含む厳しい規制がかかる。

<関連リンク>
千代田区住宅宿泊事業の実施に関する条例(素案)
素案「6.住宅宿泊事業の実施の制限」について
千代田区都市計画図(用途地域等)

 文教地区等の区域学校等周辺区域人口が密集している
区域
人口が密集していない
区域
家主居住型日曜正午~金曜正午日曜正午~金曜正午制限なし制限なし
家主不在型
(常駐型)
日曜正午~金曜正午日曜正午~金曜正午制限なし制限なし
家主不在型
(駆けつけ型)
全日不可全日不可日曜正午~金曜正午制限なし

 

中央区:区内全域で平日の営業を制限

中央区では、区内全域で月曜日の正午から土曜日の正午まで民泊の営業を制限する。東京23区では、住居専用地域のみで制限する動きが主流となるが、中央区は区内全域で厳しい規制をかける。

<関連リンク>
中央区住宅宿泊事業の実施に関する条例
中央区都市計画図(用途地域など)

 

港区:住居専用地域の家主不在型は春/夏/冬休みのみ

港区では、住居専用地域および文教地区を制限区域とするとともに、民泊の運営業態(家主居住型か家主不在型か)で民泊の営業日数を制限する。

家主居住型の場合は区内全域で180日間の営業が可能になるが、家主不在型の場合は、住居専用地域および文教地区であれば実施できるのは春休み(3/20〜4/10)、夏休み(7/10〜8/31)、冬休み(12/20〜1/10)期間中のみとなる。家主不在型でも住居専用地域および文教地区以外のエリアであれば、180日の営業ができる。

《関連リンク》
港区における住宅宿泊事業に関する基本的考え方と対応方針
港区都市計画図(用途地域など)

 

新宿区:住居専用地域では平日の営業を制限(約154日)

住宅宿泊事業法の施行をにらみ2016年10月から新宿区民泊問題対応検討会議を開催するなど早くから民泊のルール化を進めてきた新宿区。民泊物件のデータ分析を手掛けるメトロエンジン株式会社によると東京23区の中で最多となる約4,200件(2017年11月末現在)の民泊施設がある。

民泊の件数の多さから法施行後の影響が大きい新宿区では、「新宿区ルール」として住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例の骨子案を固めてきた。

パブリックコメントを経て公開された最新の骨子案では、住居専用地域においては民泊の営業ができるのは金曜日正午以降から月曜日正午までに制限される(平日でも祝日の場合は、祝日の正午から翌日正午まで民泊の営業が可能)。

 

文京区:住居専用地域と文教地区で平日中心に営業を制限

文京区では、住居専用地域と文教地区で月曜日から木曜日まで(日曜正午から金曜正午まで)民泊の営業を制限する。

《関連リンク》
文京区住宅宿泊事業の適正な運営に関する条例
文京区都市計画図(用途地域など)

 

台東区:常駐型ではない家主不在型は平日の営業を制限

台東区では、家主居住型か家主不在型(管理者常駐型・その他)で民泊の営業に制限をかける。事業者が住宅内に常駐する家主居住型と家主不在型(管理者常駐)では、制限はないが、それ以外の家主不在型に対して一定の制限をかける。

《関連リンク》
第3回 台東区住宅宿泊事業検討会
台東区都市計画図(用途地域など)

 区域期間
家主居住型制限なし制限なし
家主不在型
(管理者常駐型)
制限なし制限なし
家主不在型
(その他)
全域月曜日の正午から土曜日の正午
*祝日(正午)から翌日(正午)、年末年始(12/30~1/3)は除く

 

世田谷区:住居専用地域で平日の営業を制限

住居専用地域が大半を占める世田谷区では2017年6月から世田谷区住宅宿泊事業検討委員会を開催。世田谷区の落ち着いた生活環境を守ることを前提として国内外の観光旅客の宿泊ニーズに的確に対応できるようなルール作りが進められてきた。

世田谷区の条例骨子案では住居専用地域(※1)においては民泊の営業ができるのは土曜日正午以降から月曜日正午までに制限される(平日でも祝日の場合は、祝日の正午から翌日正午まで民泊の営業が可能)。

11月に骨子案についてパブリックコメントを実施し区民から意見の募集を行い、来年2月に区議会に条例案を提案予定。

(※1)都市計画法第 8 条第 1 項第 1 号にいう第 1 種低層住居専用地域、第 2 種低層 住居専用地域、第 1 種中高層住居専用地域及び第 2 種中高層住居専用地域

 

大田区:住居専用地域での民泊営業は不可(ゼロ日)

国家戦略特区を活用した民泊である特区民泊で民泊を早くから推進してきた大田区では、住居専用地域での民泊営業は一切不可能にする方針。民泊の営業ができるのはホテル、旅館の建築が可能な用途地域のみとなる。

“住宅”宿泊事業法の最大のメリットであるはずの”住宅”地での民泊営業を可能にするという利点は大田区ではまったく活かせないことになる。住居専用地域での民泊を一切認めない条例案は他の自治体では見られず大田区の民泊条例案は厳しい内容となっている。

なお、国交省は民泊の営業任数の上限をゼロ日として事実上事業を不可能にすることは、住宅宿泊事業に係る規制、振興の両面を有する本法の目的を逸脱するものとなることから適切ではないとされている。

 

杉並区:家主不在型は住居専用地域で平日中心に営業不可

杉並区では、民泊を家主不在型と家主居住型に分け、特に家主不在型の民泊について、月曜日正午から金曜日正午まで規制をかける。ただし、祝日がある場合は祝日前日の正午から祝日翌日の正午まで民泊の営業を行うことができることから、年間約170日程度は民泊の営業ができる見込み。

 

全国 民泊条例の検討状況まとめ(1/2更新)

都道府県自治体進捗状況と検討中の規制ルール
北海道・例年道路渋滞等が発生すると想定される時期の営業制限を検討
・住居専用地域で平日営業の制限を検討
住宅宿泊事業法に基づく条例に関する有識者会議を開催
北海道札幌市・学校周辺、住居専用地域等で月曜~金曜まで民泊営業を禁止
住宅宿泊事業の実施の制限に関する条例(素案)
宮城県仙台市・住居専用地域(※1)では日曜正午~土曜正午まで民泊営業を禁止
住宅宿泊事業法の施行に対する仙台市の対応案
神奈川県横浜市・低層住宅地域(※2)では月曜正午~金曜正午まで民泊営業を禁止
パブリックコメントを実施中
長野県軽井沢町・町内全域、通年での規制を要望へ
・11月27日に民泊の在り方を考える検討会
京都府京都市・住居専用地域では閑散期の1~2月のみ営業を認める
・家主居住型と一部の京町家は制限の対象外
住宅宿泊事業の適切な実施の確保等に関する条例(骨子案)
兵庫県・学校周辺、住居専用地域で民泊営業を全面禁止
住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例(素案)

(※1) 都市計画法第 8 条第 1 項第 1 号にいう第 1 種低層住居専用地域、第 2 種低層 住居専用地域、第 1 種中高層住居専用地域及び第 2 種中高層住居専用地域

(※2) 都市計画法第8条第1項第1号にいう、第 1 種低層住居専用地域、第 2 種低層住居専用地域

 

横浜市:平日中心に民泊の営業を制限

横浜市の条例骨子案では低層住居専用地域(※1)においては民泊の営業ができるのは金曜日正午以降から月曜日正午までに制限される(平日でも祝日の場合は、祝日の正午から翌日正午まで民泊の営業が可能)。

骨子案について12月19日までパブリックコメントを実施し市民から意見の募集を行い、2月に市議会に条例案を提出し来年3月の施行を目指す。

 

軽井沢町:町内全域、通年での規制を要望へ(ゼロ日)

民泊が昨今話題になっていることを受けて2016年3月に「民泊施設等の取扱基準」としたお知らせを掲載。民泊施設は町内全域で認めない方針を明らかにしている。

住宅宿泊事業法の施行を前に県が行った市町村への聞き取り調査の中でも町内全域、通年で民泊の規制を要望しているといい、民泊新法施行後も民泊の営業は認めない方針。

 

京都市:閑散期の1~2月に限定して認める(約60日)

京都市にふさわしい民泊の在り方検討会議を今年9月から開催し京都にふさわしい民泊のルール作りを進めてきた京都市では、生活環境の悪化防止を目的として住居専用地域については、1~2月に限定(年間約60日)して営業を認める方針

1~2月とした理由としては、民泊通報・相談窓口における通報件数が少ない月で、生活環境の悪化に与える影響は少ないと考えられるため。

 

北海道:住居専用地域で平日を除く60日以内に制限

住宅宿泊事業法に基づく条例に関する有識者会議を今年の8月から開催しルール作りの準備を進めてきた北海道では、不在型民泊で住宅宿泊事業に制限をかける。(ふれあい民泊と呼んでいる家主居住型民泊では営業日数や地域などで規制はかけない方針。)

不在型民泊では、民泊の営業を制限できる区域を(1)住居専用地域(2)ホテルなどがない小中学校周辺おおむね 100 メートル以内(3)別荘地(4)例年道路渋滞などが発生すると予想されるエリアなどに分類。

住居専用地域は土日・祝日の約60日以内、学校周辺は学校が休みの日のみの年間約110日、一時的に道路渋滞などが発生するエリアではその期間外での営業を認める。

 



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