日本ではまだまだ電子マネーが普及しておらず現金がないと支払いができないことも多い。一方でお隣中国では電子マネーが急速に普及していることをご存知だろうか?
中国における電子マネー取引額は150兆円とも言われ、5兆円の日本と比べると30倍以上の差も。中国で爆発的に普及する「アリペイ」とは何なのだろうか。その仕組みと普及の背景に迫る。
アリペイ(Alipay)とはどんなものか
中国語で支付宝と呼ばれるAlipayは、タオバオなどの中国インターネット市場を運営するアリババグループが提供する、中国で大手のオンラインの支払いシステム(プリペイド型電子マネー決済)のこと。
もともと中国ではクレジットカードの普及率が非常に低い一方で、「銀聯カード」と呼ばれるデビットカードが広く普及していた。日本でも「銀聯カード」での決済に対応したお店が非常に増えており、街中で「Union Pay」と書かれた看板やマークを見たことがある方も多いのではないだろう?
銀聯(ギンレイ)とは、中国人民銀行の主導で2002年に設立された決済ネットワークのことで、中国銀聯と呼ばれるデビット/クレジット決済ネットワーク会社が運営している。
一方でAlipay率いるアリババグループは、2014年にはニューヨーク証券取引所に上場するなど、中国国内だけでなく世界中に事業を展開。中国市場でのスマートフォンの普及にあわせてAlipayも普及し中国モバイル決済の8割を占めるまでになった。なお、民泊サイト大手のAirbnbでも宿泊代金の支払いにAlipayを利用することができる(中国のみ)。
4億人以上の利用者数を誇るアリペイが人気の理由
Alipayが中国で普及した理由には、買い物時の中国独自の背景が関係している。日本では販売業者と消費者の間に信頼関係があるため、買った時に銀行振込やクレジットカードで決算してから、販売業者は料金が振り込まれたことを確認して商品を配送してくる。
ところが、中国ではネットで買い物をする時もコピー商品や不良品などが横行しているため、詐欺に遭うことが多く、商品を返品したくても販売業者と連絡が取れなくなってしまう。こうした事情を改善するために普及したのがAlipayである。
Alipayの使い方としては、まずアカウントにお金をチャージして、購入の手続きを済ませたら料金を販売業者ではなくAlipayに支払う。利用者が代金を支払うと販売業者には支払い完了通知が送られるため、それをもって商品を発送。
利用者は届いた商品を確認して、問題があれば業者に連絡して返品や再発送を申し出ることができる。例えば商品代金を払ったものの商品が届かない場合や、注文した商品が間違っている、購入数が間違っている時は、サポートセンターに連絡をすると仲介しクレーム処理をしてくれる。
利用者が支払った購入代金はすぐに販売業者に支払われるわけではなくAlipayが一時的に預かるため、販売業者側に何らかの問題が起きればすぐに返金してもらうことができる。
中国モバイル決済でのシェアが8割の魅力
Alipayは、販売業者にとっては客の代金未払の心配が無く、利用者にとっては偽物の商品を掴まされた時には、代金の支払いをしなくてもいいなど、お互いに利点がある電子商取引システムである。そのため中国で急速に普及し、今では中国モバイル決済シェアの8割以上を占めるまでに至った。Alipayは、AndroidとiPhoneのスマートフォン用のアプリがあり、ネット通販だけでなく店舗で買い物をしたときやレストランで食事をした時にも支払い方法として選択可能だ。
主な利用方法としは、利用者がスマーフォンにAlipayのアプリをインストールして、画面に個人の情報と関連付けたバーコードを表示させて、店の店員がバーコードリーダーでスキャンすれば即座に支払いが完了する。代金を支払う時に現金を必要としないことから、小額の決済をする時などに使われており中国全土で普及が進んでいる。
Alipayでは、スマートフォン同士で個人間のお金の送金もできるので、バーコードリーダーを準備していない小さな店でも店主の個人のAlipayに代金を振り込んでもらうこともできる。中国ではAlipayの普及によって、財布を持ち歩かない若者が増えている。まれにAlipayの支払いに対応していない店舗もあるが、そういう時には店員個人か隣にいる見ず知らずの客のAlipayに支払って、店員や他の客に現金で代わりに支払ってもらうことも。
アリペイのすごいポイントとは
Alipayが中国で普及しているもう一つの理由とは、マネーを入れておけば様々なサービスを利用できるところだ。電気代、水道代、インターネット代、携帯電話の利用料金、タクシー代、航空チケット代、海外への送金など生活に関わるほとんどの支払いでAlipayが利用できる。またAlipayはサービス手数料が無料のため、わざわざ銀行に行って電気代や水道代を支払う必要がなく便利だ。支払いも簡単で、金額を入力してバーコードをスキャンしてもらえば支払いは完了する。
Alipayでは友人や家族への送金ができる機能があり、相手の携帯番号さえ知っていればその人に代金を送金することができる。また、割り勘ができる機能もあり、たとえば会社の同僚と食事に行ったときにAlipayで割り勘することもできる。
Alipayにチャージすることは簡単で、ネットバンキングでボタンを押せば即座にチャージが可能。快捷支付という方法を使えば中国国内の銀行口座と関連付けができるため、口座からAlipayに即座にチャージできる。友人から多額のお金を送金されたときなど、Alipayから自分の銀行口座にお金を戻すのも簡単で即座にできるのが魅力だ。
日本における展開について
将来的にますますサービスが発達していくと思われる中国の決済サービスAlipayだが、日本を訪れる中国人旅行者が増えていることから、日本でのAlipayの事業展開も加速している。
東京エリアではファミリーマートではインバウント客の比率の高い店舗でのAlipay導入をスタート。PLAZA GINZAも「モバイル決済 for Airレジ」でのAlipay決済対応をスタートした。関西エリアでは関西国際空港のほぼ全店でAlipay決済が導入されているなど日本におけるAlipay対応店舗も着実に増えてきている。
訪日外国人が過去最高を更新しつづける今、Alipay決済対応店舗は今後も日本国内で増えていくことだろう。