LCCとは?

LCC(ローコストキャリア)は、格安航空会社として知られる航空サービスの一形態です。ANAやJALなどのフルサービスキャリアと比較して、大幅に割安な航空券を提供しているのが特徴です。

LCCは、様々な方法でコストを削減しています。例えば、機内サービスを最小限に抑え、航空券の予約をインターネットに限定することで人件費を抑えています。また、使用機材を統一し、整備や運用コストを抑えています。

これらの施策により、LCCは従来の航空会社よりも大幅に安い運賃を実現しています。ただし、機内食や受託手荷物などのサービスは別料金となることが多いため、サービス内容と料金体系を確認することが重要です。

 

ピーチ
ANAホールディングス傘下のLCC。関空拠点で多数の都市に就航。ピンク色の機体が特徴。自動チェックイン機や受託手荷物の有料化など、徹底したコストカットを実施。シンプルな利用に適している。

ジェットスター・ジャパン
安全性評価の高いカンタス航空グループ傘下のLCC。国内最多の就航都市数を誇る。国際線も多数運航。

スプリングジャパン
中国LCC出資の格安航空会社。成田発着の国内3路線と中国5都市への国際線を運航。LCCとしては珍しい佐賀・広島路線が人気。

 

国内線のLCC会社一覧

ピーチ・アビエーション

ピーチ・アビエーションは、ANAホールディングス(全日空)の子会社として設立された日本初の本格LCCです。2012年に関西国際空港を拠点とし、札幌(新千歳)や福岡など、国内の主要都市間をリーズナブルな運賃で結びました。

その後、長崎・鹿児島・沖縄(那覇・石垣)・仙台・成田といった全国各地に路線網を拡大。海外路線もアジア主要都市であるソウル・香港・台北・高雄へと飛んでいます。

 

ジェットスター・ジャパン

ジェットスター・ジャパンは、オーストラリアのカンタス航空、日本航空、三菱商事の3社が共同出資して誕生したLCCです。

2012年に成田~札幌、成田~福岡といった国内線を皮切りに就航をスタート。以降、那覇や関西、大分、松山など全国に路線を広げ、成田・中部・関西の3空港を主要拠点としています。

2015年からは日本発着の国際線として香港線を開設し、海外への飛行機移動も格安で利用できるようになりました。ピーチ・アビエーションと並び、国内LCCの2大勢力として多くの利用者を抱えています。

 

スプリング・ジャパン

中国のLCCである春秋航空と日本企業が共同出資して設立されたのがスプリング・ジャパンです。大手航空会社グループ以外としては国内初のLCCという位置づけで、現在は成田空港を拠点に広島・札幌(新千歳)といった国内線を運航しています。

また、2016年には国際線として武漢・重慶への路線を開始し、中国からの訪日客を取り込む役割も担っています。設立当初から「中国人旅客の日本への集客」を目的の一つとして掲げているため、今後も中国圏に向けた路線が増える可能性があります。

 

スカイマーク

スカイマークは、従来の大手航空会社とLCCの中間的存在として「MCC(ミドル・コスト・キャリア)」と呼ばれることがあります。主要拠点は羽田空港と神戸空港。札幌(新千歳)・福岡・沖縄(那覇)などへの定期便を運航しており、短い間隔でフライトを設定しています。

機内サービスを削減しつつも、手荷物は3個まで無料、さらにスカイマーク都合の欠航時には他社便への振替対応を行うなど、大手に準ずる安心感を備えています。「安いけれど、できるだけ快適に移動したい」という方には要チェックの航空会社です。

 

エア・ドゥ(AIRDO)

エア・ドゥ(AIRDO)は、北海道の本社を置く航空会社で、現在はANAグループの傘下になっています。LCCと間違われることがありますが、厳密にはLCCではありません。

北海道と本州を結ぶ路線が充実しているのが特徴で、就航路線には、羽田~札幌(新千歳)、羽田~旭川、羽田~函館、羽田~帯広、羽田~釧路、羽田~女満別などがあります。

ANA系列のネットワークを活かしながら、北海道発着便をリーズナブルに利用できる点が魅力です。機内では北海道にちなんだサービスやアメニティも取り入れられており、道民や北海道旅行リピーターにとって親しみやすい航空会社となっています。

 

ソラシドエア

ソラシドエアは、宮崎県宮崎市に本社を置く航空会社で、羽田~宮崎線の就航から事業を拡大してきたのがソラシドエアです。ソラシドエアもLCCと間違われることがありますが、LCCではありません。

2004年には経営再建を行い、ANAが第二株主として出資。その後はANAとのコードシェア運航を実施し、さらにエア・ドゥとも連携体制を整えています。

その結果、実質的に「ANAグループの一員」としても見られる存在になり、大手並みの安定感を獲得しました。運賃は比較的抑えられている一方、機内サービスや機材のメンテナンスはANAの基準を踏襲しているため、安全面での評価も高いのが特徴です。

 

スターフライヤー

スターフライヤーは、北九州空港を拠点に2006年から運航を始めた北九州市に本社を置く航空会社です。

スターフライヤーは、そのシックな黒い機体と革張りの座席が象徴的。LCCでも大手でもない独自路線を打ち出しており、機内サービスのクオリティを高めながらも比較的お手頃な価格帯を設定しているのがポイントです。

全席に個人用モニターを設置し、無料ドリンクではタリーズコーヒーのオリジナルブレンドを提供するなど、“ちょっと贅沢”な空の旅が楽しめます。顧客満足度の調査でも高評価が続き、リピーターが多いことでも知られています。

 

LCCと他の航空会社の違い

LCCは、航空運賃を安く抑えるため、運営を効率化することでコストを抑えて運航しています。

ANAやJALなどのフルサービスキャリアでは、飲み物が振舞われたり、無料で座席指定できたりしますが、LCCでは、機内サービスや受託手荷物、座席指定などでそれぞれ費用がかかります。

LCCは、とにかく安く旅行したいという方におすすめです。値段よりも、機内サービスや座席指定などのサービスを重視する方は、ANAやJALなどのフルサービスキャリアが向いています。

ANAやJALと比べると安い航空運賃

LCCは、従来の航空会社が提供する多くの無料サービスを省略し、運行便数を調整することでコストを削減しています。これにより、ANAやJALなどのフルサービスキャリアと比較して、大幅に安い航空運賃を実現しています。

ただし、機内食やドリンク、座席指定、受託手荷物などの追加サービスには別途料金がかかる場合が多いため、追加サービスが多いとその分料金が上がっていくため注意ください。

最小限の機内サービス

LCCでは、機内サービスが最小限に抑えられています。LCC最大の魅力は、徹底的な省コスト化による航空運賃なので、無料の機内食やドリンクなどの機内サービスはありません。

ただ、LCCでも機内食やドリンク、アルコール類の販売は行っています。割高にはなるので、事前に機内食やドリンク類を注文したい場合は、航空券の予約時に一緒に予約すると安く購入できます。

オプション料金がかかる受託手荷物

LCCでは受託手荷物は基本的に有料サービスとなっています。例えば、ピーチ・アビエーションの運賃タイプ「ミニマム」では、受託手荷物1個目につき1,950円の料金がかかります。

また、受託手荷物のオプションを航空券の予約時に行うのか、予約後にオプションの追加をするかでも料金が変わります。基本的には、予約時に受託手荷物も含めて手続きするようにしましょう。

一方、JALやANAなどの大手航空会社では、一定の重量・サイズ制限内であれば無料で受託手荷物を預けることができます。

オプション料金がかかる座席指定

LCCでは座席指定にオプション料金がかかるのが一般的です。例えば、ピーチ・アビエーションでは、飛行機前方の席や非常口座席など足元のスペースが確保しやすい座席は、料金が高くなります。

一方、JALやANA、その他の従来型航空会社では通常、無料で座席指定ができます。LCCを利用する際は、人数分増えるので、この追加費用を考慮しなければなりません。

予約・支払い手数料

LCCの航空運賃自体は安価ですが、受託手荷物や座席指定などのオプション追加ごとに手数料がかかるだけではなく、ほかにもさまざま手数料が上乗せになることが多いため注意が必要です。

その一つ目が空港施設利用料です。また、航空運賃をどのように支払うかの選択によって支払手数料もかかります。

LCCでは様々なセールが開催されていますが、セールで表記されている運賃は、支払手数料を含まない純粋な航空運賃です。これらすべての支払い手数料の合計金額が実質的な航空運賃になるという点に注意しましょう。

 

LCCが安い理由とは?

営業窓口を持たない選択

多くのLCCでは、従来の窓口販売を行わず、ウェブサイトを通じたチケット販売に特化しています。これにより、窓口運営にかかる人件費や光熱費などの固定費を大幅に削減できます。

オンライン販売システムを活用することで、効率的な運営を実現し、その分のコスト削減を運賃に反映させています。乗客にとっても、24時間いつでも便利に予約できるメリットがあります。

受託手荷物の有料化

航空会社の運営コストの約25%~28%は燃料費です。LCCでは、燃料費削減のため受託手荷物を厳密に管理しています。搭載する貨物が増えると必要な燃料も増加するため、余分な重量の燃料費を搭乗者に負担させることで運賃の削減を図っています。

そのため、多くのLCCでは受託手荷物の大きさや重量に制限を設け、超過分を有料化することでコスト管理を徹底しているのです。

機内サービスの有料化

格安航空会社では、基本的な機内サービスを有料化することでコストと運賃の削減を実現しています。サービスの質は運賃に比例するという考え方に基づき、必要なサービスはオプションとして別途申し込む仕組みを採用しています。

これにより、過剰なサービスを削減し、人件費だけでなく、余分な飲食物の搭載も省けるため燃料費も抑えることができます。

保有機材を絞り整備コストを削減

LCCでは、保有機材(航空機の種類)を1つに絞る場合が多いです。特に多いのが、エアバス社が開発・製造している「エアバスA320」です。種類を絞ることで、整備コストを抑えることができます。

また、LCCでは、新しい機材を積極的に導入しています。新型機は整備が容易で燃費効率も良く、運営コストを大幅に削減できるためです。LCCと聞くと中古機材が多いイメージですが、意外とそうではないのです。

座席数を多して座席単価を抑える

LCCの座席が狭いのは、コスト削減のためです。同じ機種でも座席数を増やすことで、1フライトあたりの収益を最大化しています。一般的にLCCでは大手よりもシートピッチ(座席の間隔)が約5cm狭くなっています。

これにより、より多くの乗客を運べるため、1人あたりの運航コストを下げられます。ただし、スターフライヤーのように逆の戦略を取る会社もあり、快適さを売りにする航空会社もあります。

スターフライヤーやスカイマーク、ソラシドエア、エアドゥは、LCCとは一線を画す存在であることから、LCCとは区別しMCC(ミドルコストキャリア)と呼ばれます。

駐機時間の短縮化

空港では、航空機にも「駐機料金」がかかります。格安航空会社は、この駐機時間を最小限に抑えることでコスト削減を図っています。着陸後すぐに乗客と荷物を積み込み、迅速に離陸する運行体制を整えています。

これにより余分な駐機料を節約し、効率的な運航を実現しています。LCCが時間に厳しいのは、このコスト削減戦略の一環なのです。迅速な運行がLCCの必須事項となっています。

 

まとめ

LCCは、機内サービスの削減や保有機材の運用効率化などによるコスト削減により、JALやANAなどのフルサービスキャリアと比べると、航空券を格安に予約できます。

一方で、航空券自体の価格は安く提供されていますが、受託手荷物や座席指定、機内食などのオプションをつけていくと、総額では意外と上がりがちになるため、注意が必要です。

LCCとフルサービスキャリアどっちが良いのかという問いに対しての正解はありません。LCCとフルサービスキャリアの違いを理解し、旅行の目的や状況に応じて、適切に選択するようにしましょう。

 



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