個人宅の空きスペースに旅行者を泊める「民泊」について政府は、民泊新法の原案をまとめたことが報道されている。政府原案ではマンションの貸主が簡単な手続きを行うだけで、旅館業法の許可を得ることなく民泊運営が可能になる。
「民泊」に関しては、訪日外国人の増加を背景に物件数が急増。民泊仲介サイトの最大手Airbnb(エアービーアンドビー)では3万件(2016年3月時点)にまで物件数が増えている。
このような事態を受け、政府は2016年4月に「民泊」を旅館業法の「簡易宿所」と位置づけ営業許可を取得できるようにした。また国家戦略特区の東京都大田区や大阪府では特区民泊の認定許可を取得することでも「民泊」運営が可能だ。しかし、日本国内の民泊物件の大半は旅館業法や特区民泊の認定許可を得ず、無許可で営業している。
新法では、都道府県に必要な書類を届け出ることで、旅館業法の許可不要で民泊運営が可能になる。現状、民泊を運営する場合、旅館業法の簡易宿所として営業する方法、国家戦略特区を活用した特区民泊として営業する方法があるが、これに加えて民泊新法を活用した民泊営業の道が開かれるということになる。
一方で簡単には喜べない「営業日数上限」の問題
民泊新法に関しては、届け出を行うことで旅館業法の許可が不要になるなど民泊の全面解禁のイメージも強いが、一方で「一定の要件」として課される「営業日数上限」を見逃すことはできない。
営業日数上限とは、一年間に民泊の営業ができる日数に上限を設けるというものである。イギリスでは年90泊以内、オランダのアムステルダムでは年60泊以内というように民泊には「営業日数上限」が設けられている。このような営業日数上限が民泊新法でも一定要件として盛り込まれる。
さらに民泊新法では「営業日数上限」だけではなく「宿泊人数上限」も設けることが検討されている。宿泊人数が増えれば公衆衛生上のリスクは高まるからというのがその理由だ。
特に「営業人数上限」に関しての問題は深刻だ。実際に年間営業日数上限が30泊などで設定された場合、ビジネスとしての参入はほぼ不可能である。
仮に年間営業日数上限が30泊に設定された場合、月間平均稼働率はたったの約10%である。平均稼働率10%で利益を出すのは不可能だ。民泊の無許可営業やビジネスホテルなどでも昨今の稼働率は80-90%であることを考えると、民泊新法への過度な期待はできない。
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