今、中国で猛威を振るう信用スコア「芝麻信用」(ジーマ信用)をご存知だろうか―――?
「芝麻信用」とは、日本よりも先行して電子マネーが急速に浸透する中国で、猛威を振る信用評価スコアのこと。「芝麻信用」は電子マネーのAlipay(アリペイ)を運営するアリババの金融事業子会社であるのアントフィナンシャル社(Antgroup)がスタートしたサービスだ。
ビッグデータを使い個人の信用力をスコアで可視化し、評価スコアが高い人には、ローンの金利優遇やレンタルサービスの保証金不要、ホテルのデポジット不要など様々な社会生活サービスでメリットを受けられることから利用者が急増している。
日本でも、Yahoo! JAPANが信用スコア事業への参入を行うことを2018年10月に発表。個々の Yahoo! JAPAN IDと結び付いた検索履歴や購買履歴、性別などの属性情報を分析し、独自の基準のスコアを算出する予定だ。
「芝麻信用」の仕組みとは
「芝麻信用」(読み方:ジーマ信用)はどのように個人の信用力をスコア化しているのだろうか。
スコアリングの元となるデータにはアリペイの決済情報に加えて個人の学歴・職歴、車両や住宅などの資産の保有状況、公共料金、キャリア支払い情報などが利用されている。芝麻信用では「身分特質」「履約能力」「信用歴史」「人脈関係」「行為偏好」という5つの項目について個々のスコアを算定し、総合点で格付けを実施。
芝麻信用のスコアは350点~950点まであり、950~700が「極めて優れている(信用極好)」、699~650が「優れている(信用優秀)」、649~600が「中程度(信用中等)」、549~350が「やや劣る(信用較差)」に分類される。
中国では、電子マネーのAlipay(アリペイ)が急速に普及しており、ネット通販の支払い方法として広く浸透しているほか、AndroidとiPhone用に提供されているアプリをインストールすれば、ネット通販だけでなく店舗で買い物をしたときやレストランで食事をした時にも支払い方法として選択できる。
このように莫大なデータ量を誇るアリペイの決済情報に加えて様々なデータを活用することで信用評価スコア「芝麻信用」は成り立っているのだ。
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「芝麻信用」で得られる5つのメリット
「芝麻信用」では、信用スコアが高ければ高いほど、保証金が不要になったり様々な恩恵を受けられるという特徴がある。例えば昨今中国で急速に普及するofoなどのシェアサイクルが保証金不要で利用できるようになるほか、レンタカーやホテルなで必要なデポジットが不要になる。
また、引っ越しの際に新居の保証金が提携の賃貸プラットフォームの場合、無料または少額になるほか、飲食チェーン店等で雨傘レンタルやスマートフォンの充電器を無料でレンタルできるサービスを受けることができる。
「芝麻信用」で高い信用スコアを獲得していると、以下の5つのメリットを享受できる。
Airbnbや小猪も「芝麻信用」に対応。保証金不要も
民泊仲介サイト大手のAirbnb(エアービーアンドビー)は、FacebookやGoogleなどのアカウントをAirbnbに接続するように、自身の芝麻信用をAirbnbに接続することでAirbnbコミュニティ内での信用度を高めることができる。
また、「芝麻信用」は、複数のホテル、民宿プラットフォーム(「飛猪旅行」、「小猪短租」等)と協力し、600点以上の高いスコアの顧客向け保証金不要、行列待ち不要のサービスを提供。便利で効率の良いプロセスにより、ゲストのチェックイン所要時間を従来の3分から45秒に短縮し、チェックアウト時間を従来の2分から18秒に短縮したという。
隣国中国ではアリババでの購入履歴に加えて個人の学歴・職歴、公共料金、税金納付、マイカーや住宅の資産状況などのあらゆる個人情報が一元管理され、ローンや引っ越し、ホテルや民泊への宿泊、レンタカー利用など様々な事前審査において利用される。
中国で急速に普及を始めた個人を信用スコアによって一元管理する「芝麻信用」は中国だけの特殊性によるものなのか、日本でも信用スコアが広がるのか、信用スコアを取り巻く今後の動向から目が離せない。