OpenAIは、2025年1月23日に旅行や食料品の購入、イベントやレストラン予約などをオンラインで完結できるAIエージェント「Operator」(オペレーター)を発表しました。

Operator(米国Proユーザーのみ):https://operator.chatgpt.com/

2024年までの従来の旅行では、旅行サイトに掲載されているホテルや旅館などから宿泊先を探してネットで予約。さらには、レンタカーサイトやチケット購入サイトで旅行先での遊びを予約するというのが一般的だったのではないでしょうか?

2025年は「AIエージェント元年」とも言われる中、AIエージェント「Operator」の登場により、「旅行予約を人間が行わない」前代未聞の新時代が訪れようとしています。

本記事では旅行・レストラン予約についてはOpen AI「Operator」経由でしか予約しなくなった筆者の実体験に基づきながら、「Operator」の凄さ、業界構造をどう変えていくのかについて深堀していきます。

 

人間が予約しない!自動予約の衝撃

「Operator」(オペレーター)は、OpenAIが2025年1月23日に発表したAIエージェントです。

Operatorでは、「東京都内でジム付きで1泊3万円以下のホテルを探して予約して」といったようにやってもらいたいことを伝えるだけで、Webブラウザを介して、まるで人間のようにWebサイトを操作することができます。

具体的には、キーボード入力、クリック、スクロールなどの操作を自動的に行い、旅行予約やショッピングのための商品購入、レストランの予約など、様々なタスクを処理することができるのが特徴です。

旅行代理店や大手オンライン旅行予約サイト(OTA)にとっては、まさに衝撃的なテクノロジーの登場といえます。これまでもAIチャットボットを採用し、顧客問い合わせの対応を自動化する動きはありました。

しかし、「Operator」は予約そのものを代行するだけでなく、利用者の好みや目的を学習して、最適な旅程を“提案から予約まで”一気通貫で実行可能にします。まさに旅行業界に大きな地殻変動をもたらす存在として注目されています。

 

AI技術と旅行業界のこれまで

実は旅行業界は、早くからAI技術との相性が良いとされてきました。航空券や宿泊料金は時期や需要によって大きく変動し、その膨大なデータを扱うにはAI分析がうってつけです。

多くの旅行予約サイトが価格予測エンジンを取り入れたり、チャットボットによるサポートを強化したりして、すでにAI技術を一部活用してきました。

しかし、従来の取り組みの多くは「問い合わせ対応の自動化」や「価格・在庫の最適化」「ダイナミックプライシング」など、あくまでビジネスオペレーションの一部に留まっていました。

「Operator」がもたらすインパクトは、こうした部分的なAI活用から一歩先に踏み込み、人間の行っていた「予約行動」そのものを代替・アップグレードしようとしている点にあります。これによって、旅行を計画する際の常識がガラリと変わる可能性があるのです。

 

「Operator」とは何か?できること

OpenAIの「Operator」は、人間に代わりウェブブラウザを自動操作をし、旅行や食料品の購入、イベントやレストラン予約などをオンラインで完結できるAIエージェントです。

Operator(米国Proユーザーのみ):https://operator.chatgpt.com/

AIエージェントとは、与えられた目標に向けて自律的に動作し、適切な行動を選びながら成果を生み出すソフトウェアを指します。人間が設定したゴールを実現するために、周囲の環境やデータを分析し、必要に応じて独自にタスクを進めます。

現在「Operator」を使えるのは、米国のChatGPT Pro(月額200ドル)ユーザー限定となっており、日本国内では利用することはできません。※厳密には、VPNを利用することで利用は可能です。

 

「Operator」でできること:予約まで自動完結

「Operator」では、ユーザーが専用アプリまたはウェブ版のチャットインターフェイスに希望や条件などやってほしいことを入力すると、AIが複数のプランを生成します。

たとえば「金曜日に羽田空港から那覇空港への片道航空券を予約してください。」と伝えるだけで、最適な行程が一覧表示されます。ただ、ここまでであれば、ChatGPTでも似たようなことはできました。

「Operator」の特徴的なのは、そこから先の予約手続きや支払い処理も、必要があればユーザーがワンクリック承認するだけでAIが自動的に行ってくれる点です。

また、宿泊予約をしたあとに、レンタカーを予約したい、美術館や展望台のチケットを予約したいといった場合は、別々のサイトで予約作業をするというプロセスが必要でしたが、「Operator」なら一つのインターフェイスで完結します。

 

「Operator」を支える技術「CUAモデル」

「Operator」を支えている要となるのが、OpenAIが新たに開発した「CUA(Computer-Using Agent)モデル」です。

これは、GPT-4oと呼ばれる視覚認識技術に強化学習を組み合わせることで、人間に近い感覚でブラウザ画面を“見て”、行動を決定できるように設計されています。具体的には以下の3段階を踏むことで、スムーズな操作を実現します。

Perception(認識):
ユーザーが与えるテキストでの指示やブラウザ画面を解析し、全体の状況を把握します。スクリーンショットやHTML情報を参照し、入力フィールドやボタンの位置を理解するのがポイントです。

Reasoning(推論):
把握した情報をもとに「次にどのボタンを押すべきか」「どの項目にテキストを入力するか」などを考え、最適な手順を組み立てます。複数の選択肢がある場合でも、タスクのゴールに向けて効率的に判断する仕組みが備わっています。

Action(行動):
仮想的なマウスやキーボードを用いて、画面上の要素をクリックしたり文字を入力したりします。これにより、実際に人間が操作しているかのようにブラウザ上のタスクを完了していきます。

この3ステップを高速かつ自動で繰り返すことで、人間が煩雑に感じる反復作業や、多数のウィンドウをまたぐような複数タスクを同時に処理できる点が「Operator」の強みです。

シンプルな処理はもちろん、処理手順が多くてもタスクの進捗を追いながら柔軟に操作を継続するため、業務全体の効率化を大幅に高めることが期待されています。

参考資料:Computer-Using Agent(OpenAI)

 

【活用例1】Expediaで「Operator」を使って宿泊予約

【Step.1】「Operator」にてExpediaにログイン

初めに「Operator」からブラウザ操作権限を取得してExpediaにログイン。

泊まりたいホテルが決まっていたので具体的なホテル名を特定して宿泊予約を「Operator」に依頼しました。※

※ExpediaのURLは本来指定する必要はありませんが、アメリカ経由でアクセスしている関係で、あえて日本語サイトに接続するように指示しています。

プロンプト

Expedia開いて https://www.expedia.co.jp/ 以下の内容で宿泊予約してください。
日時:2025年2月10日チェックイン、11日チェックアウト
ホテル:INSPIRE Entertainment Resort
人数:大人2名、子供2歳1名の合計3名 予約直前で人間の最終チェックを挟んで

 

【Step.2】「Operator」が条件を満たす検索を実行

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人間の指示通りで、カレンダーのチェックイン日やチェックアウト日、人数指定(大人2名、子供1名)を正確に指定できているのは驚きです。このあと、検索結果の中からホテルページにたどり着くことができました。

今回は、予約するホテルを特定しましたが、「韓国で評価の高いホテルを探して」といった指示ももちろんできます。

 

【Step.3】「Operator」上での予約完了画面

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初めのプロンプトでは「宿泊予約して」という指示をしていますが、「Operator」は、人間の確認を取ることなく勝手に予約することはありません。しっかりと報連相をしてくれるのが特徴です。

すでにExpediaで何回か予約を行っているため、お支払い方法には登録済みのカードが表示されており、セキュリティコードを入力するのみとなっていますが、「Operator」はある程度理解しています。

最後に、「Operator」は、セキュリティコードを入力して、予約を完了させました。

 

【活用例2】食べログで「Operator」を使ってレストラン予約

【Step.1】「Operator」にて食べログにログイン

初めに「Operator」からブラウザ操作権限を取得して食べログにログイン。

以下のプロントで指示を出したところ、麻布十番駅800m以内、8,000円以内、2025年2月4日19時30分に空いているレストランを表示するための条件を自動で入力して検索を実行。

食べログには、3.5以上の評価の店だけを絞る機能はないため、「Operator」は、検索結果から口コミ評価3.5以上で指定日時で空いているレストランを10個抽出して、その出力を結果をチャット表示上にしました。

プロンプト

食べログで2025年2月4日19時30分から2名で入れるレストランを予約したい。麻布十番駅周辺で。10個候補出して予約して。
・1人あたりの予算:8000円以内
・店の条件:食べログ上で3.5以上

 

【Step.2】「Operator」が条件を満たす店舗を提示

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チャット上には、初めのプロンプトで指示した条件を満たすレストラン一覧のうち10個が正しく表示されました。

ここから希望のレストランを選んでいきます。この情報だけで選ぶのが難しい場合は、追加で「URLも一緒に載せて」や「住所載せて」などの指示をしてもよいでしょう。

今回の例では、プロンプトでは具体的な指示はしていませんが、出力結果の店ごとに番号が振られていたため、番号を伝えるだけで希望の店を「Operator」に伝えることができました。

 

【Step.3】「Operator」上での予約完了画面

初めのプロンプトでは「予約して」という指示をしていますが、今回も人間の確認を取ることなく勝手に予約することはありませんでした。

私は、最終の予約画面を確認して「OK」と回答していますが、「Operator」は、当日キャンセルした場合、5,000円の取消料がかかる点について本当に問題ないかを丁寧に再確認してきています。

いずれにせよ、これで予約が完了が完了しました。所要時間は5分程度はかかっていますが、他のタスクをこなしながら、進捗確認しつつ、「テーブル席で」「OK」程度の一言しか返していません。

「Operator」は、どちらかというとかなりの「慎重派」と言えるでしょう。

 

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「Operator」を実際に使ってみた感想

2025年1月23日に「Operator」は登場したばかりですが、筆者は、すでに旅行予約とレストラン予約は、「人間が予約する」から「ブラウザが予約する」に置き換え済みです。その他作業についても順次移行を進めています。

初めて「Operator」を使った感想は、驚きしかなく声がでないです。「AIエージェント元年」とは我々のこれまでの「常識」を「非常識」にするのかをまじまじと見せつけられたといえます。

もちろん現状の「Operator」は、100%正確に指示通り実行できるわけではありません。ただ、時間の問題で些細なことです。ということで、ネット予約は「Operator」で実行するように移行を進めています。

筆者が実際にどのように「Operator」で予約をしているのかの活用例を次の章で、いくつか紹介しています。

 

「Operator」のメリット:作業時間の短縮

まず、Operatorを導入する最大の利点としては「作業時間の短縮」が挙げられます。反復的なウェブ操作やフォーム入力など、手動だとどうしても時間がかかるタスクをAIが代行してくれるため、人間はより創造的な他のことに時間を使えるようになります。

また、オンラインショッピングやレストランの予約といった日常の手続きにも対応してくれるので、使い方次第では生活全般の効率化に役立つ点も見逃せません。

企業においては、経費精算やデータ移行など幅広いタスクを自動化し、担当者が本来注力すべき業務に集中できるようにするなど、生産性向上にも大きく寄与すると言えるでしょう。

 

「Operator」のデメリット:コスト・精度

「作業時間の短縮」というメリットの裏側で、Operatorにはいくつかの課題が存在するのも事実です。

まず費用面では、月額約31,000円(月額200ドル)という「Operator」の価格設定は個人ユーザーにとっては大きな負担※です。※なお、今後はPlus(月額20ドル)ユーザーへの展開も予定されています。

さらに、複雑な作業への対応力にも現時点では限界があり、指示通り100%ミスなくできるかというとまだ課題はあるのが現状です。加えて、生成される情報が常に正確とは限らず、場合によっては誤った結果を導き出すリスクもあります。

また、セキュリティ面では、Operatorがブラウザ上で動作する特性上、悪意のあるウェブサイトとのやり取りによるデータ漏洩やアカウント乗っ取りのリスクも懸念されています。

 

まとめ

「AIエージェント元年」とも言われる2025年。

OpenAIの「Operator」のAIエージェントは、旅のプランニングや予約のプロセスを劇的に効率化する可能性を世の中に示しました。そしてまた、AIエージェントによって予約・購入自体が大きく変貌する可能性も秘めています。

そもそも、旅行業界において今や当たり前となっている旅行予約サイト。インターネットがない時代は、電話予約、旅行会社の店頭、JRみどりの窓口などで旅行予約するのが一般的でした。

日本での旅行予約サイトは、1996年に誕生した日立造船コンピュータによる「ホテルの窓口」に始まります。まだ約30年ほど前の話です。その当時の人もネット予約がここまで台頭するとは思っていなかったのではないでしょうか。

AIエージェントについては、まだ多くの課題が残されています。しかし、ChatGPTがここ1~2年で見せた目覚ましい進化を考えると、それらの懸念もいずれ杞憂に終わるかもしれません。

 



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