現状の「民泊」の違法性をめぐる提訴が全国で相次いでいる。東京都内のマンション管理組合が、「民泊」を無断営業していたとして、所有者に営業停止と損害賠償を求めて東京地裁に提訴していたことが6月17日、分かった。
6月16日、東京地裁で第1回口頭弁論が行われ、所有者は旅館業法の許可を受けていない事実を認めたが、争う姿勢を示しているという。訴えているのは東京都目黒区のマンション管理組合。12階建てのワンルームで全46室のマンションだ。
訴状や報道によると、2016年4月以降から同マンションのエントランスなどの共用部分で旅行者とみられる外国人が多数、目撃されるようになった。不審に思った住民がマンション管理組合に連絡して問題が発覚。管理組合が調査したところ、同マンションの特定の部屋に不特定多数の外国人が出入りしている事実を確認。旅館業法の許可を取得せずに運営されていることも確認できたという。
同マンションの規約では、居住以外の目的での使用を禁じている。管理組合によるヒアリングに対して所有者は、社員寮として使用すると説明していたが、実際は1泊5,000円程度で旅行者に部屋を宿泊させていた。事実に反することから管理組合では2017年4月に75万円の損害賠償を求めて訴訟に踏み切っていた。
口頭弁論で所有者は①近隣トラブルが発生していない②住宅宿泊事業法が成立(民泊新法=6月9日成立)―などを理由に、実質的な違法性はないと主張している。一部条件を設けつつも全国的に民泊を解禁する民泊新法(住宅宿泊事業法)はまだ運用が始まっておらず、現状では民泊を行う場合は、旅館業法の許可を取得するか特区民泊の認定を取得する必要がある。
民泊をめぐっては現在、全国的にトラブルが相次いでいる。2017年1月には大阪地裁が大阪のマンションを「民泊」で使用していた所有者に、50万円の賠償を命じる判決を言い渡していた。
全国のマンションでは、管理規約で居住以外の使用を禁じている場合が多い。民泊の利用者は訪日客を中心に急激に増えており2016年度は400万人が利用した。マンションの一室で民泊が行われるケースは多いと見られ同様の訴訟が増える可能性もありそうだ。