新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、従来のビジネス出張は ZOOM などでの「オンライン出張」に移行したが、ワクチン接種が進むアメリカでは、対面会議が予想よりも早く再開されている。
7 月下旬にラスベガスで開催される大規模な会計・金融カンファレンスには、参加者の約半数が実際に現地を訪れる予定で、年初に主催者が予想した人数をはるかに上回ったという。秋に開催される一部のカンファレンスでは、講演者や参加者のほぼ全員が対面出席を予定している。
出張の回復傾向は、企業などに対する調査でも明らかとなっている。国際公認会計士協会が実施した第2四半期の経済見通し調査によると、企業幹部の約3分の1が、コロナ禍前の水準をすでに達成しているか、年末までに回復すると予想する。
また、企業の出張旅行を管理する TripActions Inc.によると、世界でビジネス出張の予約は毎週 10% の割合で回復しており、2021 年 6 月の時点で年初から 300% 以上上昇したという。ワクチン接種率の上昇やオフィス勤務の再開を理由に予約ペース加速したとみられる。
しかし、ビジネス出張が完全回復への道のりはまだ遠い。JPモルガン・チェースによると、ビジネス出張はコロナ禍前の 30~35% の水準で推移しているが、ワクチン接種が遅い国やデルタ型が拡大している国への渡航は制限されており、海外出張の回復には特に時間がかかるとみられる。
ビジネス出張復活に向けた準備も本格化
ユナイテッド航空は6月、ジェット旅客機の発注や航空機キャビンの大幅アップグレードを発表し、ビジネス旅行者の主要目的地であるサンフランシスコなどにハブ空港を拡張した。
デルタ航空のCEOも2022年夏までに出張旅行の回復を予想しているほか、同社CEFのエド・バスティアン(Ed Bastian)氏も米国がまもなく「出張旅行のルネッサンス(復興)」を経験すると確信している。
それでも、出張旅行への支出は限定的で、目的地も複数箇所に集中している。今年の旅行ブームの大半はレジャー旅行で、とりわけ高所得者による累積需要に拍車がかかっている。
米国ホテル&ロッジング協会(American Hotel and Lodging Association)によると、2019年との比較で、5 月には 25 のホテル市場のうち 21 市場の売上が 20% 以上減少。会議からのビジネスに大きく依存している都市は、引き続き「深刻な金融危機」に直面しているという。
ビジネス出張の回復は、依然としてコロナ前の水準には戻っていないが、ワクチン接種率の改善やオフィス勤務再開などの影響で復活に向けた道のみがみえつつあるようだ。