世界最大手のオンライン旅行サイト Expedia Group(エクスペディア・グループ)は、2020年第1四半期決算発表会で、新型コロナウイルスのパンデミック後の観光旅行再開に向け回復の兆しが見られ、多くの人々が夏休みの予定を既に考えているとの明るい見通しを明らかにした。
エクスペディアのピーター・カーン最高経営責任者(CEO)兼副会長は「空室率はまだ高いレベルにあるものの、安定しつつある。5 月に入って素晴らしい成長が見られそうではあるが、まだ喜ぶことができる状態ではない」と第1四半期の決算説明会で述べた。
エクスペディアの第1四半期決算は新型コロナウイルスのパンデミックにより、対前年同期比で売上高が 15% 減の約 2800 億円(26 億ドル)、純損失は 1400 億円(13 億ドル)だった。カーン氏によると、多くの企業と同様に同社も外出制限が課された 3 月下旬から 4 月が業績の谷となったようだ。足下のエクスペディアの業績は回復傾向にあるという。
特に注目されるのが、ホテル予約よりも民泊予約において強い回復傾向がみられる点だ。エクスペディアは、バケーションレンタルサイトのバーボ(Vrbo)を運営しているが、ホテル予約よりも民泊予約でより早く顧客が戻りつつあるという。
この理由について、カーン氏は、「都市部に住む人々が家族と一緒に旅行をしたいと考えていることが背景にあるようだ」と述べた。また他社の民泊仲介サイトは都市部や部屋の物件を中心に掲載しているが、Vrbo は都市部以外の地域で一軒家の物件に重点を置いていることから競合他社よりも有利な立ち位置にあるとも付け加えた。
今後の旅行需要回復期には新しい業界秩序構築の可能性も
今回の決算説明会は、これまでバリー・ディラー会長とともに業務を行ってきたカーン氏にとって、昨年の経営改革による CEO 就任後の初の決算説明会となる。
エクスペディア・グループは2019 年 12 月、最高経営責任者(CEO)のマーク・オカストローム氏と、最高財務責任者(CFO)のアラン・ピケリル氏の退任を発表。その後は取締役会のバリー・ディラー会長と CEO のピーター・カーン氏が暫定的に会社の指揮を執っていた。
「私は我々の前にあるチャンスに本当に興奮している。旅行会社の経営を引き受けるには奇妙な時期のように思えるが私は狂っていない。会長のバリーと私が今後の事業展開の掘り下げを行った際に見えたチャンスは途方もなく大きく、素晴らしいチャンスが我々の目前にあると思っている」とカーン氏は述べた。
新型コロナウイルスのパンデミックで課された外出制限は、世界各国で緩和が始まっている。パンデミック下では壊滅的となった旅行需要は、外出制限の緩和とともに回復傾向にある。
近隣地域への家族旅行から旅行需要は回復が見られているが、旅行業界においてどのカテゴリーが最初に本格回復を果たすことになるのか、今後注目を浴びることになりそうだ。