民泊サイト最大手のAirbnb(エアービーアンドビー)には日本で5万件以上の物件が登録されているが、施設の大半が旅館業法の許可を取らない無許可営業と見られ問題となっている。国は旅館業法の規制緩和を進めているが、一部の自治体では民泊の増加に歯止めをかけようとしている。
中でも京都は無許可民泊に対して非常に厳しい対応を行っており、撤退が相次いでいる状況だ。今回は、民泊に対する京都の取り組み状況をまとめてご紹介する。
民泊も対象とする宿泊税導入を検討
京都市は市内のホテルや旅館の宿泊者に対して「宿泊税」の導入を検討している。修学旅行以外の宿泊が対象になる見込みで、旅館業法の許可を取得していない無許可民泊についても対象になる。宿泊税とは、ホテルや旅館に一定の金額以上の宿泊料金を支払い宿泊した場合に、宿泊客に課税する自治体独自の地方税のこと。宿泊税はホテルや旅館の各宿泊施設が宿泊者から徴収し、一括して都道府県に納税する。
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外部委託で無許可民泊の指導迅速化
京都市は以前から無許可民泊の調査指導に力を入れているが、営業者の特定が難しく調査が難航しているのが現状だ。そこで京都市は、既に調査ノウハウを持つ民間業者に調査を外部委託し所在地の特定作業の効率化を図り、市職員には営業の許可や停止命令といった本来の業務に特化できるようにする。
すでに、民間業者への調査委託費として1880万円を2017年度予算案に計上しており民間業者を公募で決定し年間約2,700件の無許可民泊施設を調査する予定になっている。
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無許可民泊物件262件に営業停止を指導
京都市の「民泊」対策プロジェクトチームは、無許可営業疑い施設の調査・指導状況を発表した。これによると、京都市は「民泊通報・相談窓口」に寄せられた1,564件の通報に基づき、延べ1,848回の現地調査を実施。うち262施設について、営業を中止させるなどの厳正な対応を行ったという。
調査指導対象となった1,004施設のうち56%にあたる562施設について所在地を特定。262施設が営業中止となったが残りの201施設については「指導中」で、営業中止施設数は今後増えることが予想される。
行政区別の指導対象施設数でみると、中京区が169件と最も多く、東山区159件、下京区140件が続く。いずれもAirbnbに掲載物件の多いエリアを中心に指導対象施設数が分布している。
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全国初の民泊窓口に260件の相談・通報
7月13日に設置された京都市の「民泊通報・相談窓口」に約20日間で260件の相談・通報が寄せられており、一定の効果をあげていることがわかった。うち99件については調査及び指導を行ったという。
近隣住民からは、「利用者の大きな話し声やキャリーバックを引く音など,騒音がひどく非常に迷惑」、「マンションのオートロック機能が意味をなしておらず,不安」といった声が上がっていた。
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京都府、「無許可民泊」に営業中止指導
京都府は、無許可の民泊施設の実態を把握するため、2016年5月から6月末において、民泊サイトに掲載された施設を対象に現地調査を実施。7月14日に「民泊施設の現況調査結果について」として調査結果を発表した。
調査結果によると、京都府内(京都市を除く)の民泊サイト※掲載施設は計136施設あり、うち旅館業法に基づく許可を受けている施設は27施設(20%)、無許可営業の状態にある施設は59施設(43%)、実態が不明な施設は50施設(37%)だったことがわかった。
このうち無許可営業の状態にある49施設については営業中止の指導を実施。指導に応じない場合は、告発も視野に入れて対応していくこととしている。
「民泊通報・相談窓口」を開設
京都市は8日、市民からの民泊に関する苦情や相談を電話やメールで一元的に受け付ける「民泊通報・相談窓口」を7月13日に全国で初めて開設。電話・FAX・メールにて違法民泊に関する通報・苦情や、適法に民泊を始めるための相談等の受付を開始した。
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「民泊通報・相談窓口」は,こんなときに御利用ください。
・近所の「民泊」施設が,旅館業の許可を取得しているの教えて欲しい。
・無許可で「民泊」をしているようなので,指導して欲しい。
・「民泊」を始めたいが,どのような手続きが必要なのか教えて欲しい。
・旅館業の営業許可を取得したいが,相談窓口を教えて欲しい。
・旅館業の許可申請に手数料が必要なのか教えて欲しい。
・旅館業が開業できない地域があるのか教えて欲しい。
民泊ごみは「事業ごみ」との見解を示す
5月9日、市議会くらし環境委員会の質疑で、個人宅の空き部屋を旅行者に貸し出す「民泊」について民泊事業者(民泊ホスト)の責任で「事業ごみ」として処理すべきだとの考えを示した。事業者を特定できれば、「事業ごみ」として処理するよう指導するという。
基準に違反し、ごみをみだりに投棄すると「廃棄物の処理及び清掃に関する法律(第25条)」の規定により、5年以下の懲役、若しくは1,000万円以下の罰金又は併料に処せられる。旅館業法違反の罰則は懲役6か月以下or罰金3万円以下であるのと比べると非常に重い。
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民泊実態調査の最終報告発表
5月9日、2015年からスタートしていた「京都市民泊施設実態調査」の調査結果を発表。
調査結果では、2,702件の全民泊施設のうち、46.6%にあたる1,260件の無許可民泊の所在地を特定したと発表。民泊の無許可営業が把握できた施設に対しては「旅館業法,消防法,建築基準法上の観点から,適正化に向け強力に指導」するという。
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民泊対策PTを発足
京都市は2015年11月20日、観光や衛生、消防などの担当職員で「民泊」対応のプロジェクトチーム(民泊対策PT)を発足。このプロジェクトチームは、Airbnbなどのインターネット上に公開されている民泊施設の実態調査を行い、旅館業法などの法令に基づいて運営されていない場合は指導を行う。