東京都新宿区は6月1日に、区役所で開催した第7回民泊問題対応検討会議の中で、住宅宿泊事業法(民泊新法)の届出状況を公表し、受理件数がたったの45件のみにとどまっていることが明らかになった。
なお、5月30日14時時点までの相談件数は1,062件(電話相談:670件、窓口相談:392件)あり、相談件数のうち受理にまで至ったのはたったの4%。住宅宿泊事業法の施行が6月15日と迫る中、届出状況は非常に厳しい状況にあることがわかった。
新宿区では、住宅宿泊事業の民泊営業は金曜日~日曜日のみしか受付することができず年間の営業日数は住宅専用地域の場合約156日程度に制限される。
届出受理が苦戦している背景には、週末のみに制限され事業として採算を合わせるのが難しいことがあるようだ。
民泊市場のリサーチ・調査を手掛けるメトロエンジン株式会社が提供する民泊ダッシュボードのメトロデータによると、Airbnb(エアービーアンドビー)の全削除対応直前の時点で新宿区には都内で最多となる約4,000件の民泊物件が存在しており、届出件数45件はこのうち約1%にあたる。
なお新宿区については苦情件数も増加しており、2014年度に9件だった苦情受付件数は、民泊物件が増加し始めた2015年度から急激に増え2017年度には347件に達した。なお、2018年4月についてはすでに49件の相談が寄せられている。
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新宿区、民泊系の宿泊施設をほとんど取り合わず
新宿区では、民泊の営業を行う場合、住宅宿泊事業の届出か旅館業法の許可を取得することで営業を行うことができる。6月2日にAirbnbは必要な許可を得ずに運営されている民泊物件を削除したが、削除を行う旨は以前から通知されていた。
そのため京都市や福岡市などでは、旅館業法の簡易宿所営業で民泊の営業を行う事業者が急増。京都市では簡易宿所が2年で3倍に増加したほか、福岡市では簡易宿所が1年に3倍増加していた。
しかし、新宿区内の旅館業法営業施設は、民泊物件が急増した2017年にほとんど増えていない。2017年4月末時点での257件だった旅館業許可施設数は、2018年4月末時点で276件と1年でたったの20施設しか増えていない。民泊物件の増加とともに旅館業法の簡易宿所が数倍に急増している京都市や福岡市とは対照的だ。
新宿区で旅館業(簡易宿所)の民泊施設が伸び悩んでいる理由について、民泊許可業務の第一人者で「民泊許可.com」を運営する戸川行政書士は、「合法であっても民泊系の宿泊施設に営業許可を与えることに非協力的であることが背景にあるのでは」とその理由を語った。
新宿区は一時は日本で最も人気の高いエリアでピーク時は約5,000件近い民泊が存在していたが、6月2日に実施されたAirbnbの全削除対応により物件数は急減。
住宅宿泊事業法の民泊受理も伸び悩むほか、旅館業法での民泊営業にも非協力的であることから新宿区内での民泊営業は絶望的な状況に陥っている。