口コミによる世界最大手の旅行サイト「TripAdvisor(トリップアドバイザー)」が11月1日から「警告文」表示の掲載を明らかにした。ホテルで遭遇した被害や事件に関して注意を促すことが目的で3カ月前後の掲載を予定するという。一方のホテル業界では風評被害を懸念する声も挙がっている。
トリップアドバイザーは、ユーザー数が約3億人を超える世界最大の旅行口コミサイト。2017年の売上高が日本円にして1,680億円に達する見込みの巨大なWebサイトだ。旅行者が滞在先のホテルを予約する際にレビューを確認することは多く、ホテルなどの宿泊施設への絶大な影響力がある。
そのため万が一、トリップアドバイザー上に自社ホテルに関する「警告文」が掲載された場合、イメージダウンや収益悪化につながることも想定されうる。トリップアドバイザーでは、米国大衆紙「USAトゥデー」が報じた記事内容を受けて「警告文」掲載を決定したという。
同紙の記事では、2010年にメキシコ・イベロスターのホテルで、性的暴行の被害に遭ったとされる女性の話を掲載。被害を受けた女性は、同様の被害防止のため、口コミに投稿したが、トリップアドバイザーに削除されたという。別の性被害の口コミも同様に削除していたといい、トリップアドバイザーは同紙掲載後に事実を認め、謝罪していた。
この「警告文」をめぐっては、ホテル業界から疑問を問う声が多数出ているという。その内容を次の通りに大別すると次のようになる。
・掲載を決定する基準
・どこまでさかのぼって掲載するのか
・掲載期間の根拠は
・掲載の条件となる「信用できる情報源」とは何か
書き込みのサイトは、利用者にとって便利な半面、危険性もはらんでいる。近隣のライバルホテルが風評被害を起こさせることを目的に書き込むケースもゼロとは言い切れない。
性的暴行などの事案なら、警察当局が被害者のプライバシー保護の観点を理由に、公表そのものを差し控える可能性もある。当然、トリップアドバイザーなどの民間企業相手に、警察が個別に事件をリリースすることはない。書き込みは利便性を高める重要なコンテンツだが警告文表示は「諸刃の刃」ともなる危険性をひそめていることに注意したい。