Airbnbなどの民泊施設が増加する中で、既存のホテル・旅館業界は稼働率や客室単価への打撃を恐れている。しかし現状ではホテル・旅館業界への大きな打撃は見られないことがデータ調査会社STRのデータによりわかった。
2016年4月にスターウッドホテル&リゾートは、マリオット・インターナショナルによる買収受け入れを正式発表。9月には買収が完了し世界最大のホテル企業が誕生した。その総客室数は約110万室にも達する。
そんな世界最大のマリオット・インターナショナルに2倍以上差をつけるのが民泊世界最大手のAirbnbである(下図参照)。2016年9月には約8億5000万ドル(約860億円)資金調達が複数の米メディアで報じられ、企業価値は、約300億ドルにも達する。
日本国内でも急成長を遂げる民泊市場を背景に、特区民泊や民泊新法による規制緩和が進む。一方で、既存のホテル・旅館業界は民泊市場の拡大に反対だ。
旅館・ホテル組合の全国組織である全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会(全旅連)に至っては、全国大会で「急増する民泊を阻止しよう」というスローガンさえ掲げている。
国内の大半の民泊物件が旅館業法の許可を取得せずに営業されており、防災・防犯に必要な設備を持っておらず重大な事件や事故を引き起こす恐れがある為というのがその言い分だ。
しかしAirbnbとホテルの稼働率を比較してみると、ロサンゼルスや東京、そしてAirbnbのホームタウンのサンフランシスコでもAirbnbよりもホテルのほうが高いことがわかる(下図)。
さらに、客室単価でみてもボストン、ロサンゼルスといったアメリカ7市場のうちマイアミを除く6市場でホテルがAirbnbを上回っていることがわかる(下図)。
Airbnbが急成長していることはご存知の通りであるが、これらのデータからはホテル産業に大打撃を与えているような事実は見られない。
そもそもAirbnbの利用客とホテルの宿泊客では求めている体験がまったく異なる場合が多い。
もちろんホテルよりも安く泊まれるお部屋を探し求めている場合もあるが、Airbnbの場合、ホストと交流を深め、地元の文化を体験したいと考えているゲストもいる。
さらに、Airbnbではシェアスペースやツリーハウスやテントなどの一風変わった宿泊施設も提供してくれる。
もちろんまったく影響がないわけではないが、稼働率データや成長率でAirbnbをホテルが上回るのはそのような理由からであろう。
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