中古住宅のリノベーション事業を手がけるクジラ株式会社は6月12日に街全体を”ホテル”にみたてる世界初のクラウド型ホテル「SEKAI HOTEL」を大阪にオープンすることを発表した。
クラウド型ホテル「SEKAI HOTEL」では、従来のホテルがもつ「フロント」「宿泊」「飲食」「物販」「アクティビティ」などの機能を大型の建物内に集約させるのではなく、町全体を一つのホテルと捉え各機能を点在させることで、これまで活用できていなかった小規模な中古住宅や空き家をリノベーション手法を用いて再活用させる。
大手OTAサイトに掲載されているセカイホテル4施設は此花区西九条の住宅地に点在しておりフロントは西九条駅から客室までの途中にある。旅行者はフロント施設でチェックインを行い各客室で宿泊しチェックアウト時はフロントで手続きを済ませる流れとなる。
画像はプレスリリースより
クジラ株式会社が”クラウドホテル構想”に至る背景には、外国人観光客数の増加が大きな要因がある。
大阪府のホームページによると、2014年の外国人旅行者の内、約28%の376万人が大阪に訪れているのに対し(全体約1,341万人)翌2015年は約36%の716万人と大幅な伸び率を記録している(全体約1,974万人)。
一昔前の中国人による”爆買い”は沈静化したものの、2020年に開催される東京オリンピックに向け、外国人は日本に「モノ」ではなく「コト」、つまり商品ではなくサービスを求め始めている。その結果、日本人が元来もっている”おもてなし”の精神が外国人のニーズに合致。大阪・京都を筆頭に情緒あふれる関西への人気が高まっていた。
今回オープンする「SEKAI HOTEL」が位置する此花区西九条地区は、今や東京ディズニーリゾートと人気を二分する程にまで成長したユニバーサルスタジオジャパンに隣接した地域であり、交通の利便性も申し分ない。大阪府の観光拠点として大きなポテンシャルを持っている地域だ。
しかしこのエリアはこれまで大規模な再開発が進められていない、いわば大阪に残された未開拓の地である。その原因として連棟住宅(長屋)や再建築が困難な中古住宅が密集しており、用地取得に大変手間がかかる地域で、大手ゼネコンやデベロッパー、行政が長年開発に二の足を踏んでいるエリアだった。
そこで今回フットワークが軽く小回りのきくベンチャー企業ならではの強みを活かしクジラ株式会社は、大手の手法”スクラップアンドビルド方式”ではなく、得意のリノベーション手法でスピーディ、且つモダンに”町全体”をリノベーションすることに成功した。
更に此花区西九条地区の住民に雇用の門戸を開くとともに、売上の一部を地域社会の課題解決や途上国支援に活用することも同時発表している。