観光庁は8月16日、旅館などの宿泊施設業界に対し、部屋と食事の料金を分ける「泊食分離」の導入を推進させる方針を明らかにした。時事通信によると将来的にモデル地区を指定し、長期滞在する外国人旅行者のニーズに応えるのが目的という。
「泊食分離」とは、宿泊料金と食事料金を別立てにすること。特に旅館では1泊2食付といったように食事付きの料金体系が一般的であるが、夕食の提供を旅館周辺の飲食店に任せることを意味する。
インバウンド(訪日外国人)にとって、日本の伝統的な食文化体験も魅力の一つ。長期滞在のインバウンドにとって、旅館でのメインの宿泊システムになっている「1泊2食付き」といったプランは敬遠される傾向にあるった長期の滞在によってメニューが似たような内容になったり、旅館以外でのさまざまな食文化に触れたい潜在的な要望もあるからだ。
「和食」は2013年12月のユネスコの無形文化遺産に登録。それ以降、もともと注目されていた和食文化が、世界の国・地域でさらにブームが高まっている。特に野菜を中心としたローカロリーの健康食、多彩な料理方法や味付けなどが魅力だ。フランス料理では、醤油やワサビなどの日本の材料を取り入れる料理人も増加している。
「泊食分離」のもう一つの狙いには、旅館の活性化が挙げられる。2016年の観光庁の宿泊旅行統計調査によると、客室稼働率はホテルが78.7%、ビジネスホテルが74.4%に対し、旅館が37.1%と低迷。旅館の稼働率を引き上げるためにも、「泊食分離」を実施して宿泊料金を下げることが稼働率アップの対策にもなる。これにより、旅館の割高感を払しょくし、旅行の個人化や多様化にも対応できる。
さらに「泊食分離」によって、地域が広範囲にわたって経済効果を得られるメリットもある。宿泊代金はホテルに入り、夕食などの食事を地元の飲食店でとることによって、利益を地域全体で分配できる仕組みができる。伝統的な日本の旅館では、素泊まりの設定がない施設も数多いが、最近ではインバウンドに対応した「泊食分離」を宿泊プランに設定している旅館も出始めてきた。
旅館の最大のメリットは、ホテルと違って宿泊するだけで日本の伝統文化を体験できることだ。温泉地に位置しているケースも多く、ロケーションに優れていることなども挙げられる。ただ、1泊2食付きのセットプランで割高に感じられ、インバウンドらの長期滞在の外国人らは、ホテルや民泊に流れ込む傾向が高まっているのが実情だ。
最近では、インスタグラムなどのSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の普及によって、日本を訪れる外国人旅行者も現地の飲食店情報を簡単に検索できる。利用者に複数の選択肢があることによって、インバウンドの旅館利用率が増加する可能性もありそうだ。