民間の信用調査会社の東京商工リサーチ(TSR)は、2017年度の宿泊業の倒産状況を発表、2年ぶりに前年を上回ったが、2016年に次ぐ低水準だったことが明らかになった。
2017年度の倒産件数は前年度比9.4%増の81件で、負債総額は20.7%増の415億7,000万円。倒産件数が2年ぶり、負債総額が3年ぶりにそれぞれ増加に転じた。
ただ、TSRが同データを発表してから過去20年間の推移で比較すると、2016年度に次ぐ2番目の低水準。同年度の倒産件数は74だった。
【倒産の主な原因】
1.販売不振=46件
2.累積赤字の影響=22件
3.過大な設備投資=4件
販売不振は過半数超えの56.7%を占め、前年度比で6.1%増。累積赤字の影響は前年度比で57.1%増で突出して増加した形となった。
倒産形態では「特別清算」が全体の26%で大幅に増加
倒産の形態別では、「特別清算」が21件で、前年度の13件から大幅増になるなど、顕著になった。「破産」は56件で全体の69.7%を占める。
「特別清算」は株式会社のみ適用され、通常の破産手続きと同じで、管轄する裁判所の指揮・監督の下、債権者の3分の2の同意を得て、清算手続きを開始する。
一例として経営母体を変え、新会社などを設立して事業を移管し、継続して再生を図るもので、新たな資本の導入も可能。ゴルフ場や不動産など負債規模の大きい案件の法的整理で利用されるケースが多い。
負債額では1億~5億円未満が最多で、10億円以上の大型倒産が8件あった。1,000万~5,000万円未満は13件と減少に転じた。従業員数では5人未満が最も多く、52件で全体の64.1%。300人以上の大規模な宿泊事業者の倒産はなかった。
宿泊業界では、6月に住宅宿泊事業法が施行されるなど民泊の台頭が注目を集めているが、その背景には宿泊ニーズの多様化がある。民泊はこれまでの宿泊施設では体験できない宿泊体験を提供する場として存在感を増してきた。
今後も、増加するインバウンドや多様化する宿泊ニーズを捉えた宿泊体験の提供がカギになると言えるだろう。