民泊新法の最新動向〜民泊新法のすべてを徹底解説〜

個人宅の空き部屋に旅行者を泊める「民泊」について19日安倍首相に提出された答申の中で、民泊新法の方向性が示された。2016年9月現在、現行法で民泊を行う場合、旅館業の簡易宿所として許可を取得する方法か、大阪府や東京都大田区の特区民泊を活用し許可を取る方法の2通りの選択肢がある。

選択肢の一つとして新しく加わろうとしているのが「民泊新法」と呼ばれるもので、民泊への参入を検討しているホストや事業者にとっては、その動向を見逃すことはできない。そこで今回は、民泊新法の最新動向を徹底的に解説する。

 

民泊新法とは

民泊新法とは、旅館業法でも特区民泊でもなく、シェアリングエコノミーの特性にあわせて「民泊営業」を規定する新しい法律を指す。平成 27年6月の規制改革実施計画に基づき、厚生労働省などの関係省庁による「『民泊サービス』の あり方に関する検討会」において検討が行われており、2017年の通常国会への提出を目指している。

民泊新法では、「民泊」をホストがゲストと一緒に滞在しているかどうかで「家主居住型」と「家主不在型」に類型化し、住宅提供者、民泊施設管理者、仲介事業者に適切な規制体系を構築することとしている。

 

民泊新法の提出前倒し検討との報道も

民泊新法は当初2017年の通常国会への提出を目指していたが、官邸側が関係省庁に今秋の臨時国会への前倒しを指示したと報道された。

訪日外国人旅行者の数は2016年に入っても引き続き増えている。日本政府観光局(JNTO)によると、訪日外国人旅行者数は2016年3月に史上初の200万人を突破。これまでの過去最高は2015年7月の192万人。

東京オリンピック開催の2020 年に向け「2,000万人の高み」を目指すとしてきた当初の政府目標は、2016年中にほぼ確実に達成し、目標修正後の「4,000万人」も射程圏内になりそうだ。

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民泊の2類型

「民泊」には「家主居住型(ホームステイ型)」と「家主不在型(投資型)」の2類型がある。

「家主居住型」とはホームステイ型とも呼ばれ、民泊施設自体が家主の生活の本拠である(原則として住民票がある)必要がある。一方で、「家主不在型」は投資型とも呼ばれ、家主が生活の本拠としない民泊施設を貸し出す場合の民泊を指す。

民泊新法を活用した民泊営業を行う場合は、「一定の要件」を満たす必要がある。

ホームステイ型民泊 民泊ホストが、住宅内に居住しながら、住宅の一部の空き部屋や空きスペースを旅行者に貸し出すもの
投資型民泊 民泊ホストが生活の本拠としない民泊施設を貸し出す場合の民泊

 

民泊新法でもたらされる3つのメリット

民泊新法により民泊ホストにとってどんなメリットがあるのか、そのメリットとして3つの大きなメリットが挙げられる。

  1. 民泊ホストや施設管理者が自治体にインターネット上から届出を行うだけで営業が可能。
  2. 特区民泊にはある「2泊3日以上」といった最低宿泊日数制限がない。
  3. 現行法ではできない住居専用地域でも合法的に民泊の営業ができる。

 

インターネット上から届出だけで可能に

合法的に民泊を行う方法として2016年8月時点では、特区民泊あるいは簡易宿所型民泊の2種類の方法がある。どちらも「許可制」で宿泊料を受けて人を宿泊させる営業を行う場合は、必ず旅館業法の許可を得る必要がある。

許可制とは、ある種の行動を一律で禁止したうえで、個々人についてこの禁止を解除するかどうかを行政庁に決定させる仕組みのこと。例えば、宿泊料を受けて人を宿泊させる営業は禁止されている。しかし、旅館業法の許可を得ることで、禁止は解除され旅館業の営業を行うことができるようになるのだ。

一方で、民泊新法では行政の許認可を得る必要はなく、民泊ホストや施設管理者が自治体にネットで届出するだけで営業ができる。このように、行為それ自体はなんら禁止行為ではななく、たんに事前の届出という手続上の規制を受けるにとどまる仕組みのことを「届出制」という。

「2泊3日以上」といった最低宿泊日数制限がない

国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例制度を活用した民泊(特区民泊)では、「6泊7日以上」という最低宿泊日数制限が要件の一つとなっている。特区民泊の許可を取得して合法的に民泊の営業を行う場合、受け入れるゲストを6泊7日以上するゲストだけに限定しなければならない。

6泊7日以上という日数要件は2016年中には2泊3日以上に緩和される見込みであるがいずれにせよ日数要件が課される。一方で、民泊新法では最低宿泊日数の制限を受けることはなく、1泊のみのゲストも受け入れることができるようになる。

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住居専用地域でも民泊営業が可能に

民泊新法では、民泊ホストが提供する施設は、旅館やホテルといった宿泊施設ではなく、あくまでも「住宅」という位置づけになる。そのため、新法ではホテルや旅館ではない住居専用地域でも民泊を実施可能になる。

しかし、地域の実情に応じて条例等により実施できないこととすることも可能となるため、民泊新法を活用した民泊営業を行う場合、エリア選定の際には注意が必要だ。

 

ホームステイ型民泊に対する規制内容

家主居住型の民泊はホームステイ型民泊とも呼ばれ、住宅提供者(以下、ホスト)が生活の本拠とする住宅内の空きスペースを利用者に貸し出すタイプの民泊を指す。ホームステイ型民泊の営業を開始する場合、届出だけで済む見込みで、住居専用地域でも民泊営業が可能となる。

一方で「一定の要件」として年間提供日数上限による制限(180日以下)が設けられる予定。

またホームステイ型では住宅内にはホストが滞在していることから管理者への委託などは必要としないが、ホスト自身が本人確認や安全確保など必要な処置を取ることが求められる。

・利用者名簿の作成・保存
・ 衛生管理措置(一般的な衛生水準の維持・確保)
・ 外部不経済への対応措置(利用者に対する注意事項の説明、玄関への表示、苦情対応など)
・ (集合住宅(区分所有建物)の場合)管理規約違反の不存在の確認
・ (住宅提供者が所有者でなく賃借人の場合)賃貸借契約(又貸し含む)違反の不存在の確認
・ 行政当局(保健衛生、警察、税務)への情報提供

 

家主不在型民泊に対する規制内容

家主不在型は、投資型民泊とも呼ばれ、住宅提供者が生活の本拠としていない民泊施設を貸し出す民泊を指す。日本国内でもっとも多くの民泊施設を抱えるAirbnbの大半が家主不在型の投資型民泊として運営されている。今後民泊への参入を検討している事業者が注目すべきは「家主不在型民泊」の動向となる。

家主不在型の民泊を行う場合、ホームステイ型同様、届出で運営可能になる。しかしホームステイ型とは異なりホストが民泊施設に滞在しないことから管理者に運営を委託する必要がある(なお、ホスト自身が管理者として登録することも可能)。

また民泊運営を行っている旨と「民泊施設管理者」の国内連絡先を玄関へ表示することが義務化される。

ホームステイ型同様、住宅専用地域でも営業が可能になるが、その一方で「一定の要件」として年間提供日数上限による制限(180日以下)が設けられる。

 

民泊施設管理者は登録制へ

民泊施設管理者は、行政庁への登録制になり以下の事項が義務化される。法令違反行為を行った場合は、業務停止、登録取消などの処分や、不正行為への罰則が設けられる。

・ 利用者名簿の作成・保存
・ 衛生管理措置(一般的な衛生水準の維持・確保)
・ 外部不経済への対応措置(利用者に対する注意事項の説明、苦情対応など)
・ (集合住宅(区分所有建物)の場合)管理規約違反の不存在の確認
・ (住宅提供者が所有者でなく賃借人の場合)賃貸借契約(又貸し含む)違反の不存在の確認
・ 行政当局(保健衛生、警察、税務)への情報提供

 

仲介事業者への規制内容

民泊新法では、民泊のマッチングサイトを運営する仲介事業者への規制が検討されている。民泊仲介事業者は登録制とし以下の事項が義務化される。

・ 消費者の取引の安全を図る観点による取引条件の説明
・ 当該物件提供が民泊であることをホームページ上に表示
・ 行政当局(保健衛生、警察、税務)への情報提供

なお届出がない民泊、年間提供日数上限など「一定の要件」を超えた民泊を取り扱うことは禁止とし、行為した場合は業務停止、登録取消を可能とするとともに、不正行為への罰則を設ける。

 

 

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