新型コロナウイルスの世界的な感染拡大がオンライン旅行会社の雇用にも大きな影を落としている。Booking.com はアムステルダム本社の契約社員48人を満期で契約解除し、さらに、親会社のBooking Holdings CEO、グレン・フォーゲル氏は、社内のビデオ会議でさらなるレイオフの可能性を伝えたことが、海外メディアの報道で明らかになった。
オランダのニュースサイト、NRC は「Booking.com で“目もくらむ”売上急減:レイオフ(一時解雇)がやって来る」という見出しで、入手した社内ビデオと内部資料について報道した。ただし、ビデオは公開していない。
NRC によると、4 月 10 日に「フォーゲル氏は従業員数百人とのビデオ会議で、レイオフがあるかどうかという質問に『おそらくあるだろう』と回答した」という。現時点ではレイオフの正式発表はないが、競合他社や大手旅行会社もレイオフや解雇をしており、Booking HD も同様の選択を検討しているとみられる。
Booking.com は、1996 年にオランダ・アムステルダムにて設立。現在は、ホテルからバケーションレンタルに至るまで多種多様な宿泊施設を掲載する宿泊予約サイトへと成長した。リスティング数は 2,800 万件以上、旅館や民泊などの宿泊施設はそのうち 620 万件以上掲載。
営業利益率 30% を超える優良企業として知られていた Booking Holdings だが、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に伴うロックダウンや外出自粛、各国政府による入国拒否措置などにより甚大な影響を受けているようだ。
4月初旬の予約8割減、英国とオランダで救済を申請
Booking HD は4月初旬の予約件数が前年同月比で 85% 減少しており、英国とオランダで政府による支援を申請。米国でのコロナ経済対策への救済申請はまだ決めていないという。声明では「感染症の世界的流行は多くの産業、特に旅行産業に多大な影響を与えた」とし、「我々は積極的にコスト管理を行うとともに、各国の政府補助金も注視している」と現状を報告している。コスト管理の一例としては、同社は広告費の大幅削減を約束している。
一方、英国では救済プログラムのもと、Booking HD は従業員を3カ月間一時解雇でき、従業員も給与の 80% を政府から受給できる。オランダの救済策は、政府が正規給与を従業員に3カ月間支給することで、雇用継続が可能となる。この間、大規模リストラは禁止される。
内部文書を入手したNRCによると、Booking.com の従業員組合は数週間前、会社側にレイオフの数を制限し、公平な手順で実施することを求めた計画書を提出している。
Booking.com は2019年に自社株を80億ドル相当買い戻したと報道されているが、その資金を人件費に充てることもできただけに、従業員の間には不満があるという。また、フォーゲル氏と従業員の報酬格差も問題視されている。海外メディアによると、2018 年のフォーゲル氏の報酬と従業員の平均報酬の差が 402 対 1 で、同業社の中での報酬格差は同社が最大だった。
新型コロナの大流行を受け、フォーゲル氏は今年の残りの給与を受け取らないことに同意し、経営陣も減給。従業員組合は、今年の株式付与なども断念するよう求めている。