中国、訪日団体旅行を制限 “爆買い”による資本流出を警戒か

中国の黒竜江省や広東省など複数の地方都市で、訪日団体旅行を制限していることが明らかになった。観光当局が旅行代理店に対し、口頭で指導しており、中国当局が人民元安の要因となる資本の海外流出を警戒するための措置とみられる。

このほかに福建省でも訪日団体旅行へ制限がかけられていると日本経済新聞は報じており、同省では9月から訪日団体旅行客を半分以下に制限。河北、河南、湖北省などの地方都市でも、同じような指導があったとの情報を伝えている。個人旅行は、指導の対象外となっている模様だ。

広東省広州市や湖北省武漢市では、当局が訪日団体客の取り扱いを3割減らしたことがわかっている。複数の都市での指導は8月下旬ごろから始まっており、北京や上海などの大都市でも一部旅行会社が指導を受けたという情報も伝えている。

中国当局の指導が続けば、日本にとって経済的な影響が出てくる可能性が高まる。日本政府観光局によると、2016年の訪日外国人は2,403万9,000人で前年比21.8%増の過去最多を記録。中でも訪日中国人旅行客は、前年比27.6%増の637万人でインバウンドの中で最多の3割近くを占めるためだ。

 

中国が”お得意様”の日本にも影響ありか

訪日中国人団体客が東京都内などの家電量販店、百貨店、ドラッグストアなどで大量の商品を購入する“爆買い”は、数年前のピークに比べて減少傾向にある。東京都の調査によると、2016年度の訪都中国人客の1人当たりの支出は203,816円で、前年度比18%の減少に転じた。とはいえ、2位のシンガポールに比べて40,000円以上も多く、「お得意さま」であることには変わらない。

2016年の訪日中国人旅行者の消費額(観光庁)は、1兆4,754億円でインバウンド全体の4割を占めている。訪日中国人の1人当たりの支出額は23万円になる。これが規制によって大幅に減少すると、日本の観光業界への大きな打撃になることは免れない。

中国では国策として、海外情勢に応じてさまざまな渡航制限をしている。現在、在韓米軍の最新鋭の地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備で、朝鮮半島の有事に備えて韓国への団体旅行を制限。2012年には日本政府が沖縄県の尖閣諸島を国有化したことに対する抗議の意味も込めて日本への渡航を制限したが、国民の反発ですぐに解除した経緯もある。

訪日客の3割を占める中国人観光客の今後の動向から目が離せない。



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