京都市は10月25日、民泊条例の制定に向けた有識者会議(第2回京都市にふさわしい民泊の在り方検討会議)を開いた。ホテル・旅館などの建設が制限される「住居専用地域」の民泊営業は、観光の閑散期にあたる1~2月の約60日間のみとする方向性を確認。住民の生活環境の悪化を懸念し、条例制定に向けて提案する。
これは2018年6に施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)を見据えての提案だ。民泊新法は年間の民泊営業の上限を180日間に定めているが、上限日数の運用は各自治体の状況によって条例で短縮したり、民泊営業可能なエリアを定めることができるとしている。
有識者会議では、市がオーナーやスタッフが常駐する民泊施設、近くに管理者がいる場合に限って、60日間の制限対象から外すことを提案。宿泊利用者の本人確認については、従来のホテル・旅館のような対面式、もう一つがテレビカメラを通して遠隔操作による確認方法の2通りの案がある。
特にオーナーやスタッフ不在の民泊施設は、緊急時対応に初動の遅れで対処できないケースも想定される。住民にとっては、不測の事態への対応に不安感をぬぐえない。このため、民泊事業者に自治会や住民への説明を義務付け、近くに管理者を常駐させる案も検討された。
今後も続く インバウンドへの対応
京都市では歴史的な建造物も多く建ち並び、伏見稲荷大社や清水寺など世界的に有名な観光地も多い。そのため、京都の民泊はインバウンドから非常に人気が高かった。
その一方で民泊の拡大に対して近隣住民から様々な懸念の声が上がっている。賃貸のアパート・マンションなどの集合住宅では、民泊の拡大によって短期滞在者が増加しセキュリティ上の懸念が発生するほか騒音問題などが発生することもある。戸建と違い、住居のルールが細部にわたって確立している集合住宅では、住民と民泊利用者間で共通理解するのが難しくソフト面の対策も検討課題になってくる。
市の提案に対して、会議のメンバーである有識者は大筋で賛同している。その一方で民泊需要の高い市内中心部の用途地域は、商業や近隣商業地域が大多数とあって、「住居専用地域に限定しても効果がほとんどない」という意見も出ている。民泊新法施行後、「状況を見ながら改善していくことも必要ではないか」と、柔軟な対応が望ましいという意見もあった。
市では11月にも民泊をめぐる3回目の有識者会議を開いて、条例制定に向けて原案を作成する方向で調整している。日本を代表する観光地の京都市だけに、同市の民泊条例の制定は全国的にも注目されている。