弁護士に学ぶ!民泊運営におけるリスクとその対処法

賃貸借契約

1. 締結前の確認

まずは、民泊運営目的で借りるのであれば、明示的に民泊が禁止されているのかどうかは必ず確認する必要があります。

また、民泊を「転貸借」であると捉えて転貸禁止条項違反を主張してくる賃貸人もいますので、転貸禁止条項についても確認が必要です。

標準的な賃貸借契約だと転貸禁止とされていることが多いですが、事前承諾を得ておくことで例外的に禁止が外れることもあるので、承諾が得られるかどうかも要チェックです。

そもそも民泊自体が転貸借に該当するのかについては議論の余地もあるところですが、賃貸借契約を締結する際に、賃貸人から転貸許可をもらい、契約書に明示してもらうか、口頭やメール等でも承諾を得たことを残しておくことが必要です。

最近では、賃貸人の承諾のみをもって「民泊許可物件」と宣伝されることも多いですが、あくまで賃貸人の承諾に過ぎず、旅館業法上の許可や保健所の承諾を得ているわけではないことに要注意です。

2. 制裁、解除条項の確認

仮に、民泊が明示的に禁止されていないとしても、何かトラブルが発生した場合には、オーナーから何らかの損害が発生したとして、契約の解除や違約金の請求がなされる可能性があります。

このような主張の根拠となる解除条項や違約金の定めなどは事前に確認しておく必要があるでしょう。可能であれば、民泊の運営を中止して賃貸借契約を解約することになっても、違約金が発生しないようにしておくべきと思います。

 

マンション管理規約

1. 購入/賃借前の確認作業

分譲マンションであれば、マンションのルールを定めるマンション管理規約が設けられているため、その規約において「民泊の運営」が禁止されていないかどうかは確認しなければなりません。その他事業活動が可能であるかどうかなどの確認も必要です。

また、賃貸マンションであっても、マンション管理規約が存在することもありますので、そのような場合は、規約上民泊が禁止されているかどうかの確認は必須です。

もっとも、自己所有物件である場合、所有者は、区分所有法31条1項で、「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。」という規定があるため、所有者の承諾なく規約変更したとしてもその効力が生じない可能性があります。

2. 規約変更の動き

購入/賃貸の時点では規約上、民泊が禁止されていなかったとしても、実は民泊を禁止するための規約変更の手続きをしているか、または今後そのような変更をする予定である場合もあります。このようなケースは認知することが難しいのですが、周辺で運営している民泊ホストや理事会に問い合わせるなどして確認しておくことが無難でしょう。

 

近隣住民

1. トラブルの事前予測が難しい

民泊ホストを悩ませる問題として予測が難しいのが、近隣住民とのトラブルです。クレームであることが多いので、当該近隣住民と直接法律的な問題に発展する、ということは少ないと思います。しかし、トラブルをきっかけにして、民泊運営に支障を来すリスクがあります。

場合によっては、ホストにクレームをするだけでなく、ゲストにまで接触し、嫌がらせまがいの行為をされることもあるそうです。そうなると健全な民泊の運営は事実上困難になる恐れがあります。

2. クレームが来てからの個別対応

事前に対処することが難しいので、クレームが来てからの対応になってしまいますが、まずは近隣住民が主張するクレームの内容を精査する必要があります。

ごみの出し方なのか、騒音なのか、ケンカしたのか等当該近隣住民が何を主張しているのかを正確に確認したうえで、ホスト側の問題なのか、ゲスト側の問題なのか、どちらでもないのか、すなわち、誰に法律上の責任がある問題なのか、を整理する必要があります。

器物損壊や暴力沙汰などホストやゲストに法律上責任がある場合は、専門家に相談したほうが良いと思います。逆に、法律上責任がない、ということであれば、誠実な対応をすることで沈静化を図るほかないと思います。

 

保健所/警察署

1. 運営責任者の確認

一番のリスクである旅館業法上は、営業者が許可を取得しなければいけないため、営業者に責任があることになります。

そのため、基本的にはAirbnb等に掲載しているアカウント名義が運営主体であると考えられますが、代行業者を使っている場合、代行業者がサブリースするなど包括して運営している、その他代行業者との関係で代行業者が責任を負うような契約になっていれば、代行業者が許可を取得しなければならないような可能性もあります。

2. 用途地域の確認

仮に旅館業法の許可が必要という事態になった場合、それがマンションの一室であっても許可取得の可能性はあります。

もっとも、旅館営業が可能な用途地域は限られており、住居専用地域であれば原則として旅館営業はできません。民泊を運営しようとしている物件所在地の用途指定が何であるかについては確認しておく必要があると思います。

3. 特区民泊や旅館業許可の取得

民泊が直ちに旅館業に該当するかといえば必ずしもそうではないのですが、安全に運営するためには許可取得を検討してもよいと思います。

旅館業法に基づく許可や特区民泊(2016年9月時点では東京都大田区と大阪府の一部においてのみ実施可能)という2種類があります。手続が面倒ということであれば専門家に依頼してしまうのも選択肢です。



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ABOUTこの記事をかいた人

ヤフー株式会社で企業内弁護士として勤務後、外資系法律事務所を経て国内の法律事務所に所属。 株式会社コラビットのジェネラルカウンセルにも就任し、法務観点からイノベーション事業のサポート、アドバイスをしている。 その他、ITベンチャーやフリーランス向けにもリーガルサービスを提供している。また「民泊ホストのための法律相談サービス」も提供している。