民泊新制度の最終報告書公表!民泊新制度を徹底解説

厚生労働省および観光庁は6月20日、昨年6月末に閣議決定した「規制改革実施計画」を踏まえ進めていた「『民泊サービス』のあり方に関する検討会」の議論をまとめた最終報告書を公表した。

民泊に関する新法と、旅館業法の改正案については、年度中の国会提出をめざす。

 

民泊の制度設計の基本的な考え方

新制度では「民泊」を「住宅を活用した宿泊サービス提供」と位置付け、住宅を1日単位で利用者に利用させるもので、「一定の要件」の範囲内で、有償かつ反復継続するものとする。「一定の要件」を超える場合は、民泊の新制度の対象外となるため、旅館業法に基づく許可が必要になる。

また新制度では民泊サービスを「家主居住型(ホームステイ型)」と「家主不在型(投資型)」の2つに区分し、住宅提供者(民泊ホスト)、管理者、仲介事業者(Airbnbなどの民泊仲介サイト)に対して適切な規制を課し、適正な管理や安全面・衛生面を確保する。

1.基本的な考え方
(1)制度目的
民泊の健全な普及、多様化する宿泊ニーズや逼迫する宿泊需給への対応、空き家の有効活用など

(2)制度の対象とする民泊の意義
住宅を活用した宿泊サービスの提供と位置付け、住宅を1日単位で利用者に利用させるもので、「一定の要件」の範囲内で、有償かつ反復継続するものとする。
「一定の要件」を超えて実施されるものは、新たな制度枠組みの対象外であり、旅館業法に基づく営業許可が必要である。

(3)制度枠組みの基本的な考え方
「家主居住型」と「家主不在型」に区別した上で、住宅提供者、管理者、仲介事業者に対する適切な規制を課し、適正な管理や安全面・衛生面を確保しつつ、行政が、住宅を提供して実施する民泊を把握できる仕組みを構築する。

(4)法体系
この枠組みで提供されるものは住宅を活用した宿泊サービスであり、ホテル・旅館を対象とする既存の旅館業法とは別の法制度として整備することが適
当である。

最終報告書

 

ホームステイ型民泊に対する規制

「ホームステイ型民泊」とは、住宅提供者(家主)が住宅内に居住しながら、空き部屋の一部を旅行者などへ貸し出す民泊サービスを指す。このホームステイ型民泊を行う場合、行政庁への届出が必要になる。

また住宅提供者には「管理者」同様、以下のような管理が求められる。
・利用者名簿の作成・備付け
・最低限の衛生管理措置
・簡易宿所営業並みの宿泊者一人当たりの面積基準(3.3㎡以上)の遵守
・利用者に対する注意事項の説明
・住宅の見やすい場所への標識掲示
・苦情への対応
・当該住戸についての法令・契約・管理規約違反の不存在の確認
・安全面、衛生面の確保
・匿名性の排除

2.家主居住型(ホームステイ)に対する規制について
○ 「家主居住型(ホームステイ)」とは、住宅提供者が、住宅内に居住しながら(原則として住民票があること)、当該住宅の一部を利用者に利用させるものをいう(この場合、住宅内に居住する住宅提供者による管理が可能)。

○ 住宅提供者は、住宅を提供して民泊を実施するに当たり行政庁への届出を行うこととする(家主不在型も同様)。

○ 住宅提供者には、利用者名簿の作成・備付け(外国人利用者の場合は、旅券の写しの保存等を含む。)、最低限の衛生管理措置、簡易宿所営業並みの宿泊者一人当たりの面積基準(3.3㎡以上)の遵守、利用者に対する注意事項の説明、住宅の見やすい場所への標識掲示、苦情への対応、当該住戸についての法令・契約・管理規約違反の不存在の確認等を求め、安全面・衛生面を確保し、匿名性を排除する。また、無登録の仲介事業者の利用の禁止を求めるべきである(家主不在型も同様)。

○ また、法令違反が疑われる場合や感染症の発生時等、必要と認められる場合の行政庁による報告徴収・立入検査、違法な民泊(「一定の要件」に違反した民泊や、家主居住型と偽って家主不在型の民泊を提供するもの等)を提供した場合の業務の停止命令等の処分、無届で民泊を実施したり、上記の義務に違反するなどの法令違反に対する罰則等を設けることを検討すべきである(家主不在型も同様)。

住宅提供者は、行政庁からの報告徴収等に応ずることはもとより、行政当局(保健衛生、警察、税務)の求めに応じて必要な情報提供を行うべきである。
※ 住宅提供者が仲介事業者を利用せず、自ら利用者を募集する場合についても、本報告書の制度設計のあり方に沿って取り扱うべきである。

○ 宿泊拒否制限規定は設けない。

最終報告書

 

家主不在型に対する規制について(管理者規制)

日本国内でもっとも多いとみられるのが家主不在型の民泊だ。名前の通り、住宅提供者(家主)が実際には住んでいない部屋を貸し出すタイプの民泊を指す。Airbnbでは「まるまる貸切」に分類される貸し出しタイプ。なお、出張やバカンスなどによる家主の不在期間中の貸出しは家主不在型と位置付けとなるため注意が必要。

ホームステイ型と比べると、騒音、ゴミ出し等による近隣トラブルや施設悪用等の危険性が高まり、また、近隣住民からの苦情の申入れ先も不明確である。そのため、「家主不在型」の民泊については、住宅提供者が管理者に管理を委託する必要がある。

管理者には、以下のような管理が求められる。
・利用者名簿の作成・備付け
・最低限の衛生管理措置
・簡易宿所営業並みの宿泊者一人当たりの面積基準(3.3㎡以上)の遵守
・利用者に対する注意事項の説明
・住宅の見やすい場所への標識掲示
・苦情への対応
・当該住戸についての法令・契約・管理規約違反の不存在の確認
・安全面、衛生面の確保
・匿名性の排除

 

3.家主不在型に対する規制について(管理者規制)
○ 「家主不在型」の民泊(出張やバカンスによる住宅提供者の不在期間中の住宅の貸出しは家主不在型と位置付け)については、家主居住型に比べ、騒音、
ゴミ出し等による近隣トラブルや施設悪用等の危険性が高まり、また、近隣住民からの苦情の申入れ先も不明確である。

○ そこで、「家主不在型」の民泊については、住宅提供者が管理者に管理を委託することを必要とし、適正な管理や安全面・衛生面を確保する。

○ 管理者は行政庁への登録を行うこととする(住宅提供者自らが管理者としての登録を受ければ、自宅で、家主不在型の民泊を提供することも可能)。

○ 管理者による住宅提供者の届出手続の代行を可能とすることを検討すべきである。

○ 管理者は、住宅提供者からの委託を受けて、利用者名簿の作成・備付け(外国人利用者の場合は旅券の写しの保存等を含む。)、最低限の衛生管理措置、簡易宿所営業並みの宿泊者一人当たりの面積基準(3.3㎡以上)の遵守、利用者に対する注意事項の説明、住宅の見やすい場所への標識掲示(国内連絡先を含む。)、苦情への対応、当該住戸についての法令・契約・管理規約違反の不存在の確認等を行う。

○ また、法令違反が疑われる場合や感染症の発生時等、必要と認められる場合の行政庁による報告徴収・立入検査、上記業務を怠った場合の業務停止命令、登録取消等の処分、法令違反に対する罰則等を設けるべきである。

管理者は、行政庁からの報告徴収等に応ずることはもとより、行政当局(保健衛生、警察、税務)の求めに応じて必要な情報提供を行うべきである。

最終報告書

 

仲介事業者規制について

ここでの仲介事業者とは、AirbnbやHomeawayなどの民泊仲介サイトを運営する事業者に対する規制を指し、仲介事業者は行政庁へ登録を行うことが求められる。

また仲介事業者には消費者の取引の安全性を図るため、「違法な民泊のサイトからの削除命令、違法な民泊であることを知りながらサイト掲載している場合の業務停止命令、登録取消等の処分、法令違反に対する罰則等を設けるべきである。」としている。

○ 民泊(家主居住・不在型いずれも含む。)に係る仲介事業者は行政庁への登録を行うこととし、仲介事業者には消費者の取引の安全を図るため、取引条件の説明義務や新たな枠組みに基づく民泊であることをサイト上に表示する義務等を課すべきである。

○ また、行政庁による報告徴収・立入検査、違法な民泊(無届の家主居住型民泊、登録管理者不在の家主不在型民泊、「一定の要件」に違反した民泊等)のサイトからの削除命令、違法な民泊であることを知りながらサイト掲載している場合の業務停止命令、登録取消等の処分、法令違反に対する罰則等を設けるべきである。

仲介事業者は、行政庁からの報告徴収等に応ずることはもとより、行政当局(保健衛生、警察、税務)の求めに応じて必要な情報提供を行うべきである。

○ 外国法人に対する取締りの実効性確保のため、法令違反行為を行った者の名称や違反行為の内容等を公表できるようにすることを検討すべきである。

最終報告書

 

「一定の要件」について

既存の旅館、ホテルとは異なる「住宅」と して扱い得るような合理性のあるものを「一定の要件」として設定することが必要であるとしている。「一定の要件」の具体的な中身としては「年間提供日数上限」が挙げられる。具体的な日数上限は本最終報告書の段階では決まらず、「半年未満(180日以下)の範囲内で適切な日数を設定する」との記述にとどまった。

厳しい日数上限が課される一方で、「住宅」として扱い得るような「一定の要件」が設定されることを前提に、住居専用地域でも実施可能となる見込み。

5.一定の要件について
○ 上記の「一定の要件」としては、既存の旅館、ホテルとは異なる「住宅」として扱い得るような合理性のあるものを設定することが必要である。

○ そのような「一定の要件」としては、年間提供日数上限などが考えられるが、「住宅」として扱い得るようなものとすることを考慮すると、制度の活用が図られるよう実効性の確保にも配慮しつつ、年間提供日数上限による制限を設けることを基本として、半年未満(180日以下)の範囲内で適切な日数を設定する。なお、その際、諸外国の例も参考としつつ、既存のホテル・旅館との争条件にも留意する。

○ 「住宅」として扱い得るような「一定の要件」が設定されることを前提に、住居専用地域でも実施可能とすべきである(ただし、地域の実情に応じて条例等により実施できないこととすることも可能)。

○ 「一定の要件」が遵守されているかのチェックのため、住宅提供者又は管理者に報告などを求めるべきである。

最終報告書



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