ホテルチェーン世界大手のマリオット・インターナショナル(Marriott International)はこのほど、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大による影響で、第1四半期のRevPAR(販売可能客室1室あたりの売上)は世界で 20% 超減少したことを明らかにした。一方で、中国では回復の兆しがみられるという。
新型コロナウイルスの拡大と各国政府による感染の拡大防止措置は、今年第1四半期の旅行業界に大きな影響を及ぼしているが、マリオットによると、系列ホテルの同時期の RevPAR も全世界で約 23% 減少、北米では約 20% 減少した。中国全体では需要動向に改善の兆しがあるが、それ以外の地域では動向が安定していない。
現在、マリオットグループ 7,300 以上のホテルの約 25% が一時閉鎖中で、今後さらなるホテルの閉鎖と RevPAR の減少が予想される。感染症の拡大が収まり、各国政府が規制解除するまで改善が期待されず、業績に重大な影響を及ぼすと見込んでいる。
マリオットによれば、1、2月は全世界の RevPAR は前年同期比で 0.3% 減、アジア太平洋地域を除くと 3.2% 増で、今年のスタートは堅調だった。
世界的にパンデミックが広がると、3月に RevPAR の減少率は大きくなり、2 月との比較で 3 月は全世界で 60%、北米 57%、アジア太平洋地域 74%(中国全体 83%、その他のアジア地域 68%)、欧州 71%、カリブ海・中南米 57%、中東・アフリカ 56%、それぞれ減少した。
中国はホテル需要が回復傾向 閉鎖ホテルも大幅減に
中国全体ではすでに検疫措置と渡航制限が緩和され、RevPAR が4月にかけて着実に改善し、4月の第1週には約 20% まで上昇。中国全体で閉鎖中のホテル数は、2月中旬の 90 超軒から 20 軒以下に減った。RevPARに改善の兆しも見え、4月上旬の清明節の週末には、行楽地のホテル 20 軒以上が 60% 以上の稼働率を記録、うち8軒は満室だった。
一方、北米の稼働率は現在約 10%。870 軒以上に当たる 16% が一時的に閉鎖中で、しばらく閉鎖が続くとみられる。欧州の稼働率は 10% 以下で、79% の約 500 軒が一時閉鎖中。中東・アフリカ地域では約 150 軒(54%)、カリブ海や中南米では約 200 軒(69%)が休業している。
マリオットの今年前半の宿泊キャンセル率は過去最高を記録し、予約率も低いが、グループ顧客の多くが今年後半に予約し直しているという。また、顧客サービスとして、3月中旬から6月末までの新規予約を予約当日の 24 時間前まで無料キャンセルできるようにしたほか、マリオット・ボンヴォイ会員のステータスやポイント有効期限も延長した。
さらに、医療従事者支援の一環として、米国での医療従事者に最大 1000 万ドル相当のホテル宿泊を提供。さらに、米国、カナダ、カリブ海諸国、ラテンアメリカでプログラムを立ち上げ、救急隊員や医療従事者が勤務先の病院近くのホテルを予約する際は特別料金で提供している。
中国ではすでに新規感染者は大幅減少
2019 年 12 月に中国武漢市で新型コロナウイルス感染症の症例が確認されて以降、中国大陸に広がり、ヨーロッパやアメリカ、日本など中国以外の世界全体へ拡大した。
中国での新規感染者は、1 月 27 日~ 2 月 18 日に連日 1,000 人を超えるなど急増していたが、その後の新規感染者の増加ペースは鈍化している。2020 年 4 月 22 日に中国政府が発表した数字によると、1 日の新規感染者 30 人にまで減少している。
中国における 2020 年 4 月 22 日までの累計感染者は、82,788 人で、このうち 77,151 人はすでに退院している。まだ予断は許さないものの、感染のピークは越えているほか、4 月にはマリオットで回復傾向もみられることから、明るい兆しが見えてきていると言えそうだ。