長野県白馬村の観光協会が、民泊を認めないよう村に規制を求めることを信濃毎日新聞が報じた。2018年1月をめどに施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)を見据え、村内の既存ホテル・旅館などの宿泊施設の保護を狙う。
同村は1998年の長野五輪のスキー競技の会場で、大規模スキー場の「白馬岩岳スノーフィールド」を擁し、スキー客を中心とした観光が村の基幹産業になっている。近年はインバウンド(訪日外国人)が増加しているが、日本人を含めたトータルの観光客数が落ち込んでいる。スキー場のふもとに位置する宿泊施設は約70施設あるが、客室の稼働率が平均で20%以下と低迷していた。
こうした背景もあり、村内で民泊が解禁になった場合、既存宿泊施設への影響が出るのは必至。白馬岩岳観光協会の吉沢勇会長は「外国人観光客の受け入れ先として、民泊が必要というのは大都市の事情だ」(2017年7月16日信毎web)としている。民泊新法は施行されても、都道府県や市町村の各自治体の条例によって、年間の宿泊日数やエリアなどを規制することができる。
同村のインバウンドは急増しており、2015年から2年連続で10万人の宿泊者数を超えた。しかし、全体の日本人を含めた観光客数は減少の一途をたどり、16年が205万人で、五輪開催年前後の373万人から大幅に下落。大手を除き、体力のない旅館やペンションなどの廃業が相次いでいる。一方で外国資本による廃業施設を買い取ってリニューアルさせるケースが増加している。
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民泊新法施行の影響を見据え、白馬岩岳観光協会を含む近隣のスキー場を擁する計4観光協会では6月、村議会定例会で陳情書を提出。村の基幹産業として、多くの村民が宿泊業に携わっており、民泊新法が村の経済基盤を脅かす可能性を危ぐした。
県内では高級別荘地でも知られる軽井沢町が、3月に「清らかな環境と善良なる風俗を守る」という理由を挙げ、町内全域で民泊を不可とする見解を発表した。長野県でも民泊の実施期間、北海道でも民泊エリアの検討をする方針を明らかにしている。全国の各自治体では、民泊の是非を慎重に検討しているところが多い。
国内の経済活性化に向けてインバウンドの増加は欠かせない。だが、国と各自治体では、既存の宿泊施設の保護の観点など、足並みがそろっているとはいいがたい。民泊新法を規制する動きは、今後も多数の自治体で出てきそうだ。
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