インターコンチネンタル・ホテルズ・グループ(IHG)は2018年第4四半期の財務報告の中で、ホテルの価格を需要に応じて変動させるダイナミックプライシング(DP)を年内に導入する計画であることを明らかにした。
IHGの広報担当者は、「同社グループがダイナミックプライシングの実証実験を行っていることを認めた上で、今年中に計画されている新機能のテストしており、利用可能になった際には追加の情報を発表する予定」とコメントした。
需要と供給の状況に応じてホテルの宿泊価格を変動させ売上の最大化を狙う「ダイナミックプライシング」は、昨今ホテル業界で注目を集めつつあるが、世界の大手ホテルチェーンでも導入に向けた準備が着々と進みつつあるようだ。
ダイナミックプライシングは、もともとアメリカを中心に導入が進んだもので、現在アメリカンフットボールのNFLやメジャー野球のMLB、バスケットボールのNBAなどのチケットは需給に応じて決められた価格で販売。
日本国内でも大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)が2019年1月からチケット価格を変動制に切り替えたほか、名古屋のレゴランド・ジャパンも2018年夏からダイナミックプライシングを導入するなど、注目度は高まっている。
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インド発のホテルベンチャーの「OYO」もDPで急拡大
2013年にインドで創業したホテルベンチャー「OYO(オヨ)」も、ホテルの価格設定にダイナミックプライシングを導入し、急拡大している注目のサービスの一つ。
OYOは、2013年創業にもかかわらずインド国内350都市で10万以上の客室を提供し、中国でも171都市、8.7万以上の客室を展開するなど急成長を遂げているが、その成長を陰で支えているのがAIによる価格調整だ。
OYOでは、曜日や天気、周辺のイベント情報などのビックデータを活用し、1日4,300万回以上の価格調整を行っている。ダイナミックプライシングの導入で稼働率を高めることで、客室数を急拡大させてきた。
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価格変動とは無縁の「価格固定化」に挑戦するホテルも
チケット業界やホテル業界など様々な分野でダイナミックプライシングの導入が進むなか、世界の潮流とは180度異なる「価格固定化」というアプローチに挑戦しようとするホテルがある。
そのホテルは、星野リゾートが長野県軽井沢に開業した若者向けホテルの新ブランドホテル「星野リゾート BEB5 軽井沢(ベブファイブ カルイザワ)」だ。
BEB5 軽井沢は、「仲間とルーズに過ごすホテル」をコンセプトにする20〜30代のための滞在型ホテル。35歳以下の宿泊客は1泊1室、1万6000円で宿泊できる「年間均一宿泊料金」のプランを利用できる。
利用者全員が35歳以下であれば、年末年始やゴールデンウィークなどの大型連休を含めて通年で1室(2~3人)1万6000円で宿泊でき、需要が高まるシーズンでも価格を変動させることはない。ダイナミックプライシングとは180度異なるアプローチだ。
同社よると、宿泊施設を選ぶ基準の一つとして20~30代に意識されることが多い宿泊価格をあえて固定化し旅のニーズを満たす存在となることで、将来の旅を活性化させる考え。
ダイナミックプライシングの対極にある宿泊料金の固定化が、同社の思惑通り20~30代にハマるホテルとなるか、今後の動向から目が離せない。