東横イン、10%消費増税後も販売価格への転嫁せず 「固定価格」のプライスポリシー貫く方針

消費税が10%に引き上げられる2019年10月1日が迫る中、ビジネスホテルチェーン大手の東横インは、消費増税後も増税分を宿泊価格に上乗せする目的での料金改定は実施しない方針であることを明らかにした。

同社ではこれまでも消費税込み金額表示を行ってきているが、10月1日の消費増税後もこれまで通り「税込価格」での料金表示を継続するという。

昨今、ホテル業界では人工知能(AI)や機械学習を活用し宿泊価格の設定を自動化するダイナミックプライシングが注目を集めている。

ホテルチェーン世界世界2位の OYO Hotels & Homesは、AIや機械学習を活用するホテルテックカンパニーとして知られるが、同社のアルゴリズムは1時間ごとに144,000のデータポイントを分析し、予測正確性97%の精度で毎日6,000万件の価格調整を行う。

インターコンチネンタル・ホテルズ・グループ(IHG)も同社グループホテルの価格を需要に応じて変更させるダイナミックプライシングを導入する方針だ。

ホテル業界では、着実に浸透しつつあるダイナミックプライシングであるが、東横インではプライスポリシーを制定し、宿泊需要に応じて価格を高頻度で調整する販売手法をあえて実施していない。

また、東横INNクラブカード入会会員向けには、日曜・祝日は非会員の方より20%、月曜日~土曜日は同5%の割引を行い、6か月前からの予約も可能にするなど、リピーターの確保に向けた会員向けサービスを強化している。

 

連休でも値上げせず 固定価格にこだわるホテルが増加する理由

宿泊料金を変動させず1年を通して宿泊価格を固定化するホテルは、東横INN以外にもあり徐々に増加する傾向にもある。星野リゾートが長野県軽井沢に開業した若者向けホテルの新ブランドホテル「星野リゾート BEB5 軽井沢(ベブファイブ カルイザワ)」では、35歳以下の宿泊客に対して1泊1室、1万6000円で宿泊できる「年間均一宿泊料金」を提供。

2019年4月に開業した、日本初となる無印良品のホテル「MUJI HOTEL GINZA」でも宿泊料金を季節変動や宿泊需要に応じて変動させず固定化している。

需要に応じて価格を変動させるレベニューマネジメントは、収益を上げる要素の一つになる。しかし、需要が急増するGWなどの連休シーズンでも宿泊料金をあえて固定化して、収益機会を逃すホテルが徐々に増えつつあるのだろうか。

宿泊料金の固定化に取り組む宿泊施設に共通するのは、一過性の収益確保ではなく安心感の醸成による持続性のある収益機会の確保だ。平常時の宿泊料金で予約した宿泊客と連休期間中に平常の3倍で予約した宿泊客の間にサービス品質上の変化は基本的にはない。

1年間を通して固定料金を提供することで宿泊客の安心感へとつながり、結果としてリピーター客へとつながる可能性は高まる。そのため、固定料金を導入する宿泊施設では、ロイヤルティメンバー向けの割引制度を設けたり、自社予約サイトを強化する傾向がある。



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