旅の目的地を選ぶユーザーの約9割が友人や家族、同僚など身近な人のSNS投稿写真を「きっかけ」として、特定の旅行先に興味を持つー。
企業向けユーザー生成コンテンツ(UGC)プラットフォーム大手のStackla(スタックラ)が行った調査で明らかになったのは、特定の旅行先に興味を持つ「きっかけ」となるのは、旅行サイトに掲載するプロの写真やインフルエンサーが展開した写真ではなく、身近な人のSNS投稿であるという調査結果だ。
旅行や外食、小売商品などの分野でコンテンツマーケティングが消費者に与える影響などを把握する目的で、アメリカ、イギリス、オーストラリアの消費者1,590人とB2Cマーケター150人を対象に、同社が実施した調査で明らかになったもの。
調査によると、86%の旅行者は友人や家族、同僚などのSNSへの投稿写真を「きっかけ」として特定の旅行先に興味を抱くようになったと回答し、インフルエンサーによる影響を上回る。
また、旅行の計画を立てる際、「実際の旅行者によるSNS投稿」が最も影響力を及ぼすコンテンツだと60%の人々が感じており、「旅行サイトに掲載するプロによる写真」の23%、「インフルエンサーの写真」の2%を大きく引き離した。
ホテルやリゾート地の選択に関しては、38%の人々がセレブやインフルエンサーは全く影響を与えないと回答しており、著名なインフルエンサーに対する一般消費者の信頼はここ数年間で小さくなり、UGCの影響力が拡大したことも、この調査結果が明らかとなった。
身近な人たちから旅選びの影響を受けた人たちも、いったん旅に出かければ、影響を与える側、つまり、コンテンツクリエイターとなる。実際、83%の人たちは、良い印象を持ったホテルやリゾート体験を投稿したいと考えている。
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ユーザー生成コンテンツ「UGC」への重要度が年々上昇
ホテルなどのホスピタリティ業界では、プロのフォトグラファーが客室や設備の写真を撮影し、旅行サイトに掲載することが一般的に行われている。しかし、Stacklaの調査で明らかになったのは、宿泊施設サイドが作ったコンテンツへの注目度は年々減少しているという事実だ。
この背景には、写真・ショートムービーの共有サイトであるInstagramやテキストコミュニケーションサイトのTwitterなど、誰でも手軽に発信できるサービスが普及し、体験者による口コミや評判を把握しやすくなったことがある。
こうした調査結果から、ホテルなどのホスピタリティ業界にとって今後必要になるのは、プロのフォトグラファーによるコンテンツの積極的な発信というよりは、InstagramやTwitterで宿泊客がシェアしたくなる魅力的なコンテンツ作りと言えるだろう。
なお、InstagramやTwitterでの発信や旅行サイトへの口コミ投稿など、ユーザーが生成したコンテンツのことをUGC(User Generated Contents)と呼ぶ。
マーケティング戦略としてUGCを効果的に活用している例が、ザ・リーディングホテルズ・オブ・ザ・ワールド(Leading Hotels oft he Worlds、LHW)だ。
同社では、宿泊客によるコンテンツを活用しインタラクティブな「Trending Moments」と呼ばれるページも作っている。UGCを戦略的に活用することで、LHWはゲストのコンテンツ体験を改善するとともに、直接予約の促進にも成功しているようだ。
UGCに本格的に取り組む宿泊施設が少ない中、UGCに秘められたビジネスチャンスに注目する宿泊施設は今後増えていくことになりそうだ。
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