ホテル業界をはじめとするホスピタリティ産業は、スマートフォンの普及やテクノロジーの進化とともに急速な変化を遂げようとしています。宿泊施設が今後生き残るためには、素早く新しいトレンドを汲み取り、新しいイノベーションを率先して取り入れていかなければなりません。
特に 2019 年は、ホスピタリティ業界における Google の台頭にはじまり、PayPay や Line Pay などのQRコード決済、顔認証チェックインなど新しいテクノロジーがホテル業界では特に注目を集めました。
さらに、世界大手旅行サイトでは、分散型台帳技術であるブロックチェーンの実証実験も進められるなど、新しいテクノロジーの研究開発も進んでいます。本稿では、ホテル業界のトレンドに目を向け、2020年に特に注目すべきイノベーションを明らかにしていきます。
Google が旅行業界で存在感を示す
Google は 2019 年3月に、フライト検索とホテル検索のアップデートを発表。Google フライトでは、予算内で「最安値」の旅行先を検索できるようにしたほか、Google ホテル検索では、OTA を彷彿とさせる Web サイトでホテルを探せるようにリニューアルを実施。
ホテル検索では Google Webサイト内で宿泊施設の予約から支払いまでを完結できる「Book on Google」を提供するほか、ホテルブランド名称での絞り込み機能、ホテルの宿泊価格可視化ツールの Price Insight など様々なサービス提供を開始しました。
その後、民泊ニーズの高まりを受けて、オンライン宿泊予約サイトのExpedia (エクスペディア)や Vrbo(ヴァーボ)などの複数の予約サイトに掲載されている民泊物件をGoogleから一括検索できるように改善。2019 年 12 月には Airbnb(エアービーアンドビー)が日本でも Google の民泊検索サービスに物件供給を開始しています。
・Google、宿泊料金調査ツール「Price Insight」
シンガポールのホテルが「顔認証システム」を導入
シンガポールのホテルがシンガポール入国管理局と連携し、顔認識技術を利用して宿泊客のチェックイン時間を短縮させる取り組みをスタート。
新システムでは、、旅行者はセルフチェックイン機や携帯電話を使って本人確認を行うことができるため、ホテルスタッフによるマニュアルチェックインの手間を省くことができ、チェックイン時間を最大で70%短縮できたといいます。
シンガポール情報通信省のチー・ホン・タット上級国務大臣も、新システムの活用によって大規模ホテルでは年間で 11,000 時間以上短縮できると試算しています。
日本では、ホテル業界における人材不足問題が激しさを増す中、「顔認証システム」などスタッフの手間を削減できる新しい技術は今後注目を集めていくことになりそうです。
・シンガポールのホテルが入国管理局と連携し「顔認証システム」を導入
QRコード決済「PayPay」ホテルでも導入続々
ソフトバンクとヤフーが共同で手がけるスマホ決済アプリの「PayPay」(ペイペイ)が 2018 年 12 月に「100億円キャンペーン」を開催し、Line Pay やメルカリが提供するメルペイなども巻き込んで、 QR コード決済の戦国時代となった 2019 年。
消費税10%への増税と同時に、キャッシュレス決済を行った場合に最大5%のポイントを還元する国の補助金事業(キャッシュレス・消費者還元事業)の開始が 10 月にされたこともあり QR コード決済の導入がホテル業界でも続々と進んでいます。
大手チェーンホテル系では、ビジネスホテルチェーンの東横INNが PayPay などの QR コード決済を導入。ホテルモントレグループも全 20 ホテルで PayPay を導入しています。プリンスホテルも 2019 年 11 月にホテル、スキー場、ゴルフ場でメルペイによる QR コード決済の提供を開始しました。
PayPay によると、2019 年 11 月現在、登録ユーザー数は、累計 2,000 万人を突破し、加盟店は 170 万カ所以上に増え、累計決済回数は3億回を超えたといいます。今後も、PayPay などの QR コード決済サービスはホテル業界にも続々と増えていくと予想されます。