ホテル予約のプラットフォーム「Splitty」はこのほど、中国のコングロマリット、復星国際(Fosun international)のグループ企業の復星鋭正資本(Fosun RZ Capital)をリードインベスターとするシリーズAで総額約7億5,600万円(675万ドル)を調達したことを明らかにした。
復星集団は1992年創業したコングロマリット・投資企業で、トップの郭広昌(グオ・グアンチャン)氏はその投資実績から「中国のウォーレン・バフェット」とも呼ばれる。日本では、星野リゾートトマム(北海道占冠村)の買収、ハウステンボスへの出資を行った企業として知られる。
復星集団が出資したSplittyは2015年、イスラエルで設立されたホテル予約を専門とするスタートアップ。ホテルの連泊を割安にする独自の手法で市場デビューし急成長を遂げる注目の企業で、現在、127カ国で50万以上の物件を取り扱っている。
ホテルの連泊予約でSplittyが独自のディスカウント価格を提供できる背景には、滞在日数を分割し組み合わせる「Split & Match 技術」がある。例えば、5泊のホテル予約をする場合、2泊と3泊に分け、食事の有無などの諸条件とを組み合わせて、5連泊で予約するよりも安くなる宿泊方法を探し出し提示する。
Splittyは組み合わせの可能性として考えられる150万以上のトランザクションを瞬時に分析、分割して結果を提示できるうえ、分割した滞在を1回の予約のみで処理する。これが従来のオンライン旅行サイトにはない強みとなっている。
ホテルと宿泊客をWin-Winにする Splitty
Splittyが従来のオンライン旅行サイトと一線を画すのは、宿泊客の連泊が割引になるという特徴にとどまらない。ホテルや旅館などの宿泊施設は、Splittyによって、ホテルの稼働率を上げることができるという点だ。
例えば、総部屋数2(シングルルーム・ダブルルーム)の宿泊施設で、ある月の1日から5日までの間に、2組の宿泊客からそれぞれ2連泊の予約が入っていたと仮定する。
もし、この宿泊施設に対して4連泊したいと考える利用者がいた場合、従来のオンライン予約サイトでは「満室」で予約することはできなかった。それは、シングルルームとダブルルームを2泊ずつに分けで予約するという予約方法は現実的ではないためだ。
しかし、Splittyでは、初めの2泊はシングルルーム、残りの2泊はダブルルームでの宿泊で予約という宿泊予約を1回で行うことができる点を強みとしている。
予約の組み合わせが、複数パターンある場合、すべての宿泊予約パターンをユーザーに提示。どのような部屋に何泊ずつ宿泊した結果、宿泊金額の合計がいくらになるのかを確認しながら、最適な客室プラン組み合わせで予約できる。
Splitty 日本でも利用可能 今後、日本語対応の可能性も
復星鋭正資本(Fosun RZ Capital)は2018年にイスラエルオフィスを開設し、数カ国で事業を展開。Splittyへの投資は同社の旅行テック事業の布石となるもので、同社会長のJin Hualong氏は「イスラエルにおける我々の投資戦略は、最先端のテクノロジーに焦点を当てることになるだろう」と話した。
一方、SpilittyのCEO、エラン・シュスト(Eran Shust)氏は同社について「従来のオンライン旅行サイトとは一線を画す」とし、「ホテルは15%以上稼働率を上げることができ、ユーザーは最高で5割減の価格で宿泊できるWin-Winなサービス。復星鋭正資本はビジネスのグローバル展開を支援してくれる完璧なパートナー」だと述べた。
今回の投資ラウンドに参加したのは復星鋭正資本のほか、2b Angels、Techstars Ventures、Cockpit Innovation、11-11 venturesといったVC等が資本参加しており、Splittyはチームを増強するとともに、市場の拡大を狙う。
現在、Spilittyはヨーロッパとアメリカを中心にホテル予約を提供しているが、巨大化が進む中国の旅行市場を前にアジア市場への進出に意欲を示している。
対応言語は、英語と中国語となっているが、すでに日本のホテル予約にも対応済みのほか、日本円の通貨表記にも対応していることから、日本市場参入の可能性もゼロではないと言えそうだ。
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