民泊とは?Airbnbが人気を集める理由と規制緩和の方向性

個人宅の空き部屋に旅行者を泊める「民泊」が2015年10月頃から多数のテレビ番組やニュースなどで取り上げられ、話題になっている。

「民泊」という言葉自体は、昔からある言葉で目新しいことはない。ここでは、そもそも「民泊」とは何なのかという基本的なところから、なぜ今「民泊」に脚光が当たっているのかを解説していく。

 

民泊とは?

民泊とは、端的に言えば「民家に宿泊すること」。ホテルや旅館といった宿泊施設ではなく、個人の自宅やマンションの一室などに宿泊することを指す。

日本には3万件以上の民泊施設が存在するなど急成長を遂げている一方で、現行の旅館業法では個人宅の空き部屋であっても「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」に当たる場合には、旅館業法上の許可が必要となる。

訪日外国人旅行者の数は年々増加しており2020年の東京オリンピックまでは引き続き増えることが予想されるため、政府は旅館業法の規制緩和と新しい法制度(民泊新法)の枠組みつくりを行っている。

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なぜ今「民泊」が話題なのか

なぜ今多くのテレビ番組やニュースで取り上げられるほど「民泊」が話題になっているのか。その理由は「Airbnb(エアービーアンドビー)」という米国発のインターネットサービスにある。

Airbnb(エアービーアンドビー)とは、空き部屋を貸したい人(ホスト)と部屋を借りたい旅人(ゲスト)とをつなぐ、2008年に創業した米国発のサービス。すでに世界190ヶ国34,000以上の都市で利用され、通算のゲスト数は4,000万人を超える。

Airbnbによってもたらされたもの、それが他人の家に他人が泊まるタイプのホームシェアリング(民泊)だ。従来、民泊といえば、友人を自宅に招く「民泊」や、旅行先で知り合った人の家に泊まる「民泊」が一般的だった。しかし、Airbnbとインターネットの力、そしてお部屋の貸し手とお部屋の借り手の双方がお互いに評価される仕組みによって、他人の家に他人が泊まるタイプの民泊が実現。

信頼できる相互評価システムを持つAirbnbは人々を魅了し続け、ついに2015年時価総額では、ホテル大手のマリオット・インターナショナルを上回る価値にまで成長したユニコーン企業※になった。

※企業としての評価額が10億ドル(約1000億円)以上で、非上場のベンチャー企業を指す。

 

「民泊」で進む規制緩和

厚生労働省が公開している「民泊サービスと旅館業法に関するQ&A」によると、個人宅の空き部屋に旅行者を泊める民泊であっても「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」に当たる場合には、旅館業法上の許可が必要だ。

しかし、国は訪日外国人急増によるホテル不足と全国で増加する空き家有効活用の観点から、「民泊」の規制緩和を進めている。昨今、進む民泊の規制緩和状況をまとめると次のようになる。

時期 エリア 規制緩和の内容
2017年 原則、全国 民泊新法の制定
従来の旅館業法で定める4つの営業形態(ホテル営業、旅館営業、簡易宿所営業、下宿営業)のいづれにも当てはまらない、「民泊サービス」に関して規定する法律、民泊新法が制定される。
2016年秋 特区民泊エリア 特区民泊の日数要件緩和(6泊以上→2泊以上)
国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例制度を活用した民泊(特区民泊)の最低宿泊・利用日数を、現行の「6泊7日以上」から今秋にも「2泊3日以上」に規制緩和することが正式決定された。
2016年秋 大阪市 大阪市特区民泊
国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例制度を活用した「特区民泊」が大阪市でスタート。
2016年4月 原則、全国 旅館業法の運用緩和
旅館業法の運用緩和(旅館業法施行令の一部改正、簡易宿所営業における玄関帳場に関する通知の見直し)
2016年4月 大阪府の一部 大阪府特区民泊
国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例制度を活用した「特区民泊」が大阪府の一部の地域でスタート。
2016年1月 東京都大田区 大田区特区民泊
国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例制度を活用した「特区民泊」が東京都大田区でスタート。

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民泊を合法的に行う3つの方法

特区民泊
特区民泊とは、国家戦略特別区域法に基づく旅館業法の特例制度を活用した民泊のこと。2016年現在、特区民泊の開業ができるのは国家戦略特区のうち民泊条例を制定している東京都大田区、大阪府の一部、大阪市に限られる。
簡易宿所(旅館業法)
2016年4月、簡易宿所の許可取得を取得しやすいように旅館業法の運用緩和(旅館業法施行令の一部改正、簡易宿所営業における玄関帳場に関する通知の見直し)を実施。
民泊新法
民泊新法とは、民泊の普及に向け政府が検討する新法のこと。2017年の通常国会への提出が目指されている。

 

Airbnb(エアービーアンドビー)人気の秘密

airbnbtop

それは、従来の宿泊施設であるホテルや旅館ではできない体験2つの体験ができるからだ。人気の理由の一つが「個性的なお部屋」だ。Airbnbで実際に公開されているお部屋の種類には、個性的で魅力的なお部屋が沢山ある。

たとえば大高原にあるツリーハウスであったり、キャンピングカー、さらにはヨットの中やお城まで多種多様なお部屋のタイプがある。ホテルにはない「ユニークなお部屋で泊まれる」というのが人気の一つ。

Airbnbが人気を博す二つ目の理由、それは「ローカル体験」。他にもお部屋を貸し出しているホストと一緒に朝ごはんを食べたり、一緒に観光する体験ができるお部屋もあり、単身の旅行者でも旅行先の友達に会うかのように旅ができるという魅力も人気の一つでもある。

 

大半が旅館業法の無許可営業

寝具を提供し宿泊料を受けて人を宿泊させる営業は、旅館業法の適用を受ける必要がある。旅館業を営む場合、旅館行法施行令で定める構造設備基準、都道府県の条例で定める衛生基準に従い、都道府県知事(保健所設置市または特別区にあっては、市長又は区長)の許可を得なければならない。

日本ですでに3万件を超える民泊物件が公開されているAirbnbであるが、その大半が旅館業法の必要な許可を得ずに営業されていると言われている。近隣住民などから保健所への問い合わせも増えており、保健所のチェックが入った段階で営業を中止するホストが後を絶たない。

「旅館業法順守に関する通知に係るフォローアップ調査結果の概要(厚生労働省)」によると保健所が行政指導した場合、「営業を取りやめた」354件(36%)がもっとも多く、多くの民泊物件が指導後に撤退する状況がうかがえる。

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無許可営業に対する摘発強化も

日付 場所 詳細
2016年7月 東京 個人宅の空き部屋に旅行者を泊める「民泊」を旅館業法の許可を取得せずに営業したとして、旅館業法違反の疑いで「ハイブリッド・ファシリティーズ」(東京都港区)と親会社「ピクセルカンパニーズ」(同)の2社と、両社の役員ら男女6人が書類送検されたことがわかった。
2016年6月 東京 ピクセルカンパニーズの子会社が運営支援を行っていた民泊ホストに対する旅館業法違反の被疑事件の一環で、同子会社にも警視庁による捜査が入る。この事件によりピクセルカンパニーズは民泊事業からの撤退を表明した。
2016年4月 大阪 大阪市で旅館業法の許可を得ずに旅行者を泊めた疑いで、女性と夫婦の計3人が旅館業法違反の疑いで書類送検。
2015年11月 京都 京都市右京区の賃貸マンションの44室中34室で、旅館業法の許可を得ずに観光客約300人を有料で宿泊させ、旅館業を営んだ疑いで書類送検。
2014年5月 東京 木造3階建ての自宅の1~2階部分にある3室(24.9m2)を1泊1人2,500~5,000円程度で旅行者に提供していた英国人男性(28)が旅館業法違反で逮捕、略式命令(罰金3万円)を受けた。

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無許可営業以外にも山積みの課題

日本国内でのAirbnb物件数は3万件を突破、ホスト参入を検討している方々は多く日々増え続けている。現行の旅館業法では個人宅の空き部屋であっても「宿泊料を受けて人を宿泊させる営業」に当たる場合には、旅館業法上の許可が必要だ。

しかし3万件の大半の物件は旅館業法の許可を得ない無許可の状態で運営されている。無許可営業以外にも近隣住民や管理組合とのトラブル、衛生・安全面での問題や既存のホテル業界との不公平感など課題は山積みだ。

近隣トラブル

東京や大阪などの大都市では、共同マンションの一室がAirbnbに登録されているということも少なくない。最近ではオーナーがAirbnbでの貸し出しを許可する「民泊許可物件」と呼ばれる賃貸物件も登場しているが、このような物件はオーナーの許可が得られていても管理組合や近隣住民の理解が得られていない場合が多い。

近隣住民とのトラブルの例としては、以下のようなトラブルが挙げられる。

  1. ゴミ分別の問題
  2. 共用施設をゲストが利用
  3. ゲストルームの無断転貸
  4. 深夜の騒音問題

オーナー、管理組合の許可を取らない営業

部屋を借りる際に、Airbmbで転貸する許可をオーナーや管理組合に取らずに民泊を行うホストがいる。

最近では、管理物件がAirbnbで貸し出されていないかを調査する専門企業が誕生したり、管理物件がAirbnbに出されていないかを日々確認しています。

テレビ番組や雑誌なとで、Airbnbの露出が非常に増えていることから、Airbnbの認知度は日々高まっています。

従来、オーナーや管理組合の許可を取らずに営業を行ってきた方も、airbnbの認知度上昇を背景に今後発覚するケースが増加すると予想されます。

衛生面、安全上の問題

ホテルや旅館などは、不特定多数の人が出入りするため公衆衛生や風紀が乱れやすくなることから、旅館業法による構造上の規制、衛生上の規制、立地上の規制等がある。

民泊もホテル同様、不特定多数の人特に訪日外国人が出入りすることが多い。一方で無許可営業の民泊はホテルや旅館のような営業を行なっていながらも、何の規制も受けていない現状がある。

またホテルのようにフロントでの本人確認を行わないことも多く、エボラ出血熱のような感染症対策、テロ対策などの安全対策では懸念も残る。

 

問題山積みの「民泊」が盛んな理由

今話題の「民泊」はいくかの問題をはらんでいることをご理解いただけたと思います。

その一方、羽田空港のある東京都大田区では、区が民泊を認める条例が制定され、2016年1月に民泊許可申請が開始される見込みとなるなど、民泊合法化の動きが進みつつあります。

なぜ問題も多い「民泊」が合法化されようとしているのでしょうか?

その理由として以下のものが挙げられます。

  1. 急増する訪日外国人観光客と逼迫するホテル
  2. 急増する空き部屋、空き家問題の「救世主」

 

訪日外国人観光客と逼迫するホテル

昨今の円安や中国のビザ発給緩和など様々な要因で訪日外国人観光客が急増しています。

JNTO(日本政府観光局)によると、訪日外国人観光客の数は、2014年に1341万人を突破。

2015年は9月時点で2014年の数値を抜いており、2015年は11月までの数値で、1796万人で前年47%のペースで増加しています。

政府は当初平成32年(2020年)までに外国人観光客を2000万人にすることを目標としていましたが、早々に目標達成が確実になったため、急遽3000万人へ目標値を引き上げるほどです。

一方で訪日外国人が想定を上回るペースで増加したことで、ホテルのキャパシティを超える事態が発生するようになりました。

第3回 「民泊サービス」のあり方に関する検討会で観光庁より提出された「宿泊需給の状況について(観光庁)」の資料によると、平成27年月の客室稼働率は、東京都で93.2%(ビジネスホテル)、大阪府では95.3%(リゾートホテル)、90.5%(ビジネスホテル)とほぼ満室状態が続いていることが伺えます。

 

急増する空き部屋、空き家問題

いま日本では空き家が急増していることをご存知でしょうか?

日本における空き家の数は820万戸で,5年前に比べて63万戸(8.3%)増加しています。

空き家率(総住宅数に占める割合)は,平成10年に初めて1割を超えて11.5%となり,平成25年には13.5%と、平成20年に比べ0.4ポイント上昇し、空き家数、空き家率共に過去最高になるなど、空き家増加が問題になっています。(※1)

(※1)平成25年住宅・土地統計調査結果」(総務省統計局)

急増する空き家の救世主として注目されているのがAirbnb(民泊)です。

空き家をAirbnbで出して訪日外国人のおもてなしを行うことで、空き家の問題とホテル満室の問題の2つの問題をクリアできます。

「民泊」は、いくつか超えなければならない課題はあるにせよ「救世主」として注目せざるを得ない状態になっているのです。

 

「民泊」の今後と未来

東京都大田区と大阪府では民泊条例が制定され、東京都大田区は2016年1月にも日本初となる民泊解禁地域になります。

「民泊」は、急増する空き家の問題、そして訪日外国人の急増により発生する宿泊施設の不足という2つの問題を解決できることから、民泊には追い風が吹いていると言えます。

一方で、ホテル・旅館のような厳しい基準を満たない状態で民泊が営業しつづける場合、今後なんらかのトラブルが発生する可能性もあります。

厚生労働省は、民泊を旅館業法で定める「簡易宿所」として位置付け、簡易宿所の要件を緩和する方針を固めましたが、実態に即した形でのなんらかの規制は必要であると言えるでしょう。

Photo by jinkazamah